AIが音楽制作の常識を変える?Eleven Musicの機能と使い方、料金プランを徹底解説

AIが音楽制作の常識を変える?Eleven Musicの機能と使い方、料金プランを徹底解説

AI技術の進化は目覚ましく、私たちの生活に様々な変化をもたらしています。中でも音楽制作の分野では、革新的なAIツールが次々と登場し、誰もが手軽に高品質な楽曲を生み出せる時代が到来しました。今回は、AIオーディオ研究のリーディングカンパニーであるElevenLabsが発表した最新のAI音楽生成モデル「Eleven Music」について、その魅力や使い方、料金プラン、そして気になる実用性まで詳しくご紹介します。

 

Eleven Musicとは?

Eleven Music Begin your musical journey.

(出典:ElevenLabs

Eleven Musicは、AIオーディオ研究と製品開発のグローバルリーダーであるElevenLabsが開発したAI音楽生成モデルです。2025年8月6日にローンチが発表され、企業、クリエイター、アーティスト、そして一般ユーザーが、自然言語のプロンプトからスタジオ品質の音楽を生成できるように設計されています。Eleven Musicは、アーティスト、レーベル、出版会社との提携を通じて、権利者保護の仕組みを構築した上でリリースされており、完全ライセンス対応のAI音楽生成サービスを目指しています。

Eleven Musicで何ができる?その機能と特徴

Eleven Musicは、どんなジャンルやスタイル、ボーカルの有無にかかわらず、瞬時にスタジオ品質の音楽トラックを生成できるのが大きな特徴です。シンプルなテキストプロンプトで数分以内に曲を作成でき、理想のサウンド、ムード、用途を説明するだけで音楽が実現します。

主な機能と特徴は以下の通りです。

スタジオ品質のオーディオ生成

高品質のステムから構築されたAIエンジンにより、深い音楽的知性と感情的忠実性を持つ44.1kHzのオーディオを提供します。映画のシネマティックなスコア、ポップトラック、広告のジングルまで、プロフェッショナル品質の楽曲を制作可能です。

多言語対応

日本語、英語、スペイン語、ドイツ語など、複数の言語でカスタマイズされたトラックを迅速に作成できます。

自然言語入力と幅広いスタイル

ジャンル、ムード、スタイルを自然な言葉で説明するだけで、洗練された完全プロデュースの曲を作成できます。テクノ、ミニマル、シンセウェーブ、トライバルなどのスタイルを含めたり、ポップ、ヘビーディストーション、グリッティボーカルなどを除外したりといった指定も可能です。ジャンル、音楽の伝統、楽器をシームレスに融合させ、革新的なサウンドスケープを生み出すことができます。

セクションごとの生成・編集

曲のセクション(イントロ、バース、コーラス、ブリッジなど)ごとに生成・編集を行うことで、シームレスなトランジション、正確なムードシフト、詳細な曲構造を作成できます。各セクションの長さ、歌詞、スタイルを調整可能です。

商業利用の許諾済み

生成された音楽は幅広い商用利用が許諾されており、映画、テレビ、ポッドキャスト、広告、ゲーム、ソーシャルメディアなどで即座に使用できます。ElevenLabsは音楽業界のパートナーと協業し、ライセンスデータに基づいてモデルを開発しているため、ユーザーは安心して商用利用が可能です。ただし、一部の制限(商業ライブラリの編集目的での使用禁止、アーティスト名・曲名・アルバム名などのプロンプトとしての使用禁止)がありますので、利用規約の確認が推奨されます。

AIエディターと研究主導のイノベーション

簡単なアイデアから高度な編集まで、プロフェッショナルに仕上げられたトラックをプロンプト一つで生成できます。Eleven Musicは、世界をリードする研究チームによって開発され、複雑な多層的なプロンプトでも歌詞、キー、BPMを正確に追従できると示されています。

APIの提供

近日中にEleven Music APIが公開される予定で、高品質なAI生成音楽をアプリ、プロダクト、クリエイティブなワークフローに直接統合できるようになります。自然言語プロンプトからリアルタイムでトラックをプログラム的に生成し、スタイル、構造、歌詞、長さを完全にコントロールすることが可能になります。

 

Eleven Musicの直感的な使い方

Eleven Musicは、シンプルなテキストプロンプトから音楽を生成できる直感的なインターフェースを提供しています。

基本的な使い方は以下の通りです。

プロンプトの入力

Eleven Music プロンプト入力画面

AI音楽ジェネレーターにアクセスし、聴きたい曲のイメージを記述します。例えば「リバーブのかかったボーカル、レトロなキーボード、フェイズギターを特徴とするスローで夢見心地のインディーロック」のように、ジャンル、ムード、スタイル、楽器、ボーカルの有無などを自然な言葉で入力します。

バリアントと長さの選択

Eleven Music 曲長の選択

プロンプトに基づいて生成したい曲のバリアント数(通常は自動で選択されます)と、曲の長さを選択します。最大4分間の曲を生成できますが、自動設定のままでも利用可能です。

生成

Generateボタン

「Generate」ボタンをクリックすると、AIが曲を生成します。生成時間は、Sunno AIよりは遅く、Udioと同程度と感じられる場合があります。

曲のプレビューと編集

Eleven Music 編集

生成された曲はすぐにプレビューできます。曲の構成が認識され、イントロ、バース、コーラス、ブリッジなどのセクションが表示されます。

  • セクションの調整:
    Eleven Music セクション調整タイムライン上で各セクションの長さを調整したり、不要なセクションを削除したりできます。
  • スタイルの調整:
    Eleven Music スタイル調整自動で生成される「スタイルを含める」「スタイルを除外する」のタグを編集することで、音楽の雰囲気を微調整できます。特定のセクションにのみスタイルを適用することも可能です。
  • 歌詞やナレーションの追加:
    Eleven Music New Sectionプロンプトボックスに歌詞やトレーラーのナレーションなどを追加すると、AIがそれに合わせて曲を生成します。

一度生成した曲は、ダウンロードボタンからMP3ファイルとして保存したり、カスタムのオーディオビジュアライザービデオを生成してソーシャルメディアで共有したりすることも可能です。

 

Eleven Musicの料金プランと無料・有料プランの違い

Eleven Music 料金プラン

(出典:ElevenLabs

Eleven Musicは、ElevenLabsにサインアップすることで無料で利用を開始できますが、無料プランや安価なプランには利用や商業ライセンスに制限があります。

無料プランでは、以下のような制限があります。

  • 高品質なテキスト読み上げ機能などが含まれますが、商用ライセンスは含まれず、帰属表示が必要となる場合があります。
  • 特定のクレジット数や利用時間目安が設定されています。
  • オーディオ出力品質は128kbpsに制限されます。
  • ダウンロードするには有料プランへのアップグレードが必要です。

有料プランは、利用者のニーズに合わせて複数用意されており、月額料金と提供されるクレジット数、機能が異なります。

  • Starter(スターター)プラン:月額5ドルから利用でき、商用ライセンスが含まれ、より多くのクレジットが提供されます。
  • Creator(クリエイター)プラン:月額22ドル(初月11ドル)で、さらに多くのクレジット(100,000クレジット/月)と、より高品質な192kbpsのオーディオ出力が可能です。プロフェッショナルボイスクローンも利用できます。
  • Pro(プロ)プラン、Scale(スケール)プラン、Business(ビジネス)プラン:これらはさらに多くのクレジットと機能を提供し、大規模なコンテンツ制作や企業向けに設計されています。API経由での44.1kHz PCMオーディオ出力や、マルチシートワークスペースなどが利用できます。
  • Enterprise(エンタープライズ)プラン:ボリュームに応じた割引やカスタム条件が必要な大企業向けに、カスタム価格で提供されます。

高ボリュームの利用や映画、テレビ、ビデオゲーム向けのライセンスには、営業チームとのカスタムプランの相談が推奨されています。

Eleven Musicを実際に使ってみたレビュー

Eleven Musicは、シンプルなプロンプトから高品質な楽曲を迅速に生成できる点で評価されています。

Eleven Music プロンプト入力

実際に使用したレビューでは、「オフィス内で流す曲をメタルアレンジで強弱を付けて作成してください」という簡単なプロンプトから、歌詞と曲が2パターン生成され、1分30秒ほどのメタルアレンジ曲とポップなメタル楽曲が完成しました。

Eleven Music 生成結果

生成された楽曲のクオリティは高いものの、日本語の発音に不自然な点が見られたり、プロンプト内の括弧書きの指示が歌詞として認識されてしまう課題も報告されています。これらの点は、今後のアップデートでの改善が期待されています。

またAIが生成した曲がラジオで流れていてもAI製と区別がつかないほど非常に良く聞こえるという感想や、ドラムが非常にクリアでシンセも良く、要求した通りの音楽が生成されたという評価があります。さらに、曲の構成を認識し、イントロやバース、コーラスといった構造を自動で生成する機能も高く評価されています。セクションごとに歌詞の変更や長さの調整、スタイルの追加・削除ができるなど、ユーザーが細かくコントロールできる点も利点として挙げられます。

一方で、歌詞の明瞭さやタイミングがずれること、ボーカルがロボットのように聞こえる場合があること、生成される歌詞が時に平凡に感じられることなどの改善点も指摘されています。また、ユーザーインターフェースにいくつかのバグがあり、歌詞のペーストやセクションの編集がスムーズに行えないケースもあります。クレジット消費が比較的大きいと感じるユーザーもいるようです。

Eleven Musicは、その基盤となるAIモデルは非常に優れており、一貫性があり、音声品質も高く、ユーザーの意図をよく理解して音楽を生成できると評価されています。特に、MerlinやKobaltといった主要な音楽会社と提携し、ライセンスデータに基づいてモデルを開発しているため、既存のAI音楽生成ツールが抱える著作権問題を解決し、より倫理的な方法で音楽生成を行うことができるという点が大きな強みです。

 

Suno AIとの比較:Eleven Musicの現在地

Sunoトップページ

(出典:Suno

Eleven Musicは新たなAI音楽生成の選択肢として登場しましたが、既存のツール、特にSuno AIと比較すると、機能面でまだ発展の余地があると言えます。

Suno AIは、テキスト入力だけでボーカル付きの完成された楽曲をフルコーラスで生成できるツールとして人気を集めています。Suno AIでは、以下の点でEleven Musicよりも機能が豊富であることが指摘されています。

詳細な編集機能

Suno AIには、生成された曲の一部分の歌詞を修正する「リプレイスセクション」機能や、曲を延長する「エクステンド」機能、曲調をアレンジする「カバー」機能、お気に入りのボーカルを登録して使い回せる「ペルソナ」機能など、より高度な編集機能が多数搭載されています。

音声アップロードからの生成

鼻歌や楽器の演奏など、オーディオファイルをアップロードしてそこから曲の続きを生成する機能があり、ユーザーのオリジナルなアイデアをより深く反映させることが可能です。

インストゥルメンタルモードのシンプルさ

Suno AIではボーカルなしのインストゥルメンタル曲を生成する専用モードがよりシンプルに提供されています。

歌詞の自動生成とモデル選択

歌詞を自動生成する機能や、個性的な歌詞を生成する「レミ」モデルと無難な歌詞を生成する「クラシック」モデルといった選択肢も用意されています。

管理機能

ワークスペースやプレイリスト機能により、生成された楽曲の整理や管理がしやすい工夫がされています。

Eleven Musicもセクションごとの編集やスタイルの調整は可能ですが、Suno AIのような詳細な部分修正や、カバーアレンジ、既存の音声からの生成といった多様なアプローチには、現時点では対応していない機能が見られます。生成速度においては、Suno AIの方が早いと感じるユーザーもいます。

ただし、Eleven Musicの大きな強みは、その倫理的なアプローチとライセンスデータに基づいた開発にあります。Suno AIやUdioが著作権侵害の訴訟に直面しているのに対し, Eleven Musicはアーティストやレーベルとの提携を通じて権利者保護の仕組みを構築しており、安心して商用利用できる点が独立したアーティストや企業にとって重要な選択肢となり得ます。

Eleven Musicの現在地と未来:強み・課題・今後の進化

Eleven Musicは、AI音楽生成の分野に新たに参入した強力なプレイヤーであり、そのスタジオ品質のオーディオ生成能力、多言語対応、そしてセクションごとの細やかな編集機能は大きな魅力です。特に、音楽業界の主要なパートナーと協業し、倫理的なライセンスモデルを構築している点は、AI音楽の未来において重要な一歩となるでしょう。

しかし、日本語の歌詞の発音に不自然な部分が見られることや、プロンプトの特定の記述が歌詞として認識されるなどの課題も存在します。また、現状ではSuno AIと比較して、より高度な部分編集や多様な音楽制作アプローチの機能においては発展の余地があります。日本語の歌詞をより正確に発音させるためには、現状ではプロンプトや歌詞の記述に工夫が必要となるでしょう。

Eleven Musicは、今後のアップデートや「Eleven Music Pro」モデルのリリースを通じて、さらなる機能強化と品質向上が期待されます。倫理的な基盤を持つEleven Musicが、AI音楽制作の新たな基準を築き、クリエイターが安心して利用できる環境を提供することで、AI音楽の可能性はさらに大きく広がるはずです。

> Eleven Music公式サイトはこちら

 

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