【未来のクルマは充電不要?】日本生まれの次世代太陽電池「ペロブスカイト」が自動車業界を席巻する日【大阪万博にも登場】

【未来のクルマは充電不要?】日本生まれの次世代太陽電池「ペロブスカイト」が自動車業界を席巻する日【大阪万博にも登場】

近年、世界中でEV(電気自動車)の普及が加速していますが、充電時間やインフラ整備といった課題も指摘されています。しかし、このEVの未来を大きく変える可能性を秘めた、日本生まれの画期的な新技術をご存知でしょうか? それが「ペロブスカイト太陽電池」です。少し覚えにくい名前かもしれませんが、この技術が自動車業界、ひいては私たちのエネルギー問題を解決する「救世主」となるかもしれません。

 

「ペロブスカイト太陽電池」とは? シリコン太陽電池との違い

「ペロブスカイト太陽電池」は、太陽光を受けて発電する次世代の太陽電池です。2009年に日本の研究者、宮坂務教授が発見した技術であり、これまで主流だったシリコン性の太陽電池に比べて、多くの優れた特徴を持っています。
主な特徴は以下の通りです:

薄くて軽い、そして曲げられる

厚さはわずか1mmで、一般的な太陽光パネルの100分の1、重さは10分の1程度しかありません。フィルムのように柔らかく、折り曲げることも可能です。これにより、これまで重さや形状の問題で設置できなかったビルの壁や車の曲面など、あらゆる場所への設置が可能になります。

印刷技術で製造可能、低コスト化が期待

印刷技術で量産できるため、低コストでの製造が見込まれています。また、希少なレアメタルなどを使用せず、日本が世界第2位の生産シェアを持つヨウ素(要素)が主成分であるため、原料を国内で賄える可能性が高いという点も、エネルギー安全保障の面で優れています。

高いエネルギー変換効率と弱光条件での発電

研究開始当初は3%程度だったエネルギー変換効率が、現在では25%を超える論文も発表されており、シリコン太陽電池と同等のレベルにまで向上しています。さらに、曇りの日や室内照明など、日照条件にあまり左右されずに発電できるという強みも持っています。

トヨタが目指す「充電不要EV」の未来

この革新的なペロブスカイト太陽電池に特に注目し、その開発を推進しているのが日本のトヨタ自動車です。トヨタは「トヨタ環境チャレンジ2050」の一環として、車載太陽光発電システムの実用化に注力しています。

トヨタは京都大学発のベンチャー企業であるエネコテクノロジーズと提携し、車載用のペロブスカイト太陽電池の開発に着手しており、2025年までの実用化を目標としています。これにより、EVの大きな課題であった充電インフラ整備や充電時間の問題が解決に向かうと期待されています。

具体的には、車体に搭載されたペロブスカイト太陽電池で発電し、バッテリーに充電することで、わざわざ充電器を使う必要がなくなります。ソーラー発電だけで年間1,250kmの走行が可能になる見込みであり、ボンネットなどにより多くの太陽電池を搭載すれば、年間約3,000km走行分の発電も可能になるとされています。これは一般的な年間走行距離(約1万km)の約3分の1を太陽光で賄える計算となり、買い物などの近距離運転が多いユーザーであれば、ほぼ充電不要なEVが実現する可能性を秘めています。
従来のプリウスのソーラーパネル搭載モデルは、高額なオプション価格と長い納期が課題でしたが、ペロブスカイト太陽電池の採用により、これらのデメリットが大幅に改善される見込みです。トヨタは、現状のシリコン太陽電池とほぼ同等の発電効率を、さらに50%高めることも目標としています。

トヨタは、EV一辺倒ではなく、水素車やハイブリッド車、そして全固体電池搭載EVなど、多様な選択肢を開発してきた戦略が、現在のEV市場の状況において評価されています。このペロブスカイト太陽電池の開発も、その長期的な視点に基づく重要な一手であり、EV市場に新たな地平を切り開くと考えられています。

大阪・関西万博でも注目される「ペロブスカイト太陽電池」

大阪万博 ミャクミャクと後ろに大屋根リング

この日本生まれの新技術は、2025年に開催される大阪・関西万博の会場でもその可能性を披露しています。

パナソニックグループのパビリオン「ノモの国」

大阪万博 パナソニックパビリオン ノモの国

(出典:PR TIMES

パビリオンの外には、アート作品を表現したペロブスカイト太陽電池が展示されています。ガラスに発電する材料を塗り、一部を削ることで様々なデザインを表現できるため、見た目にも美しい太陽電池として注目を集めています。透明に見える部分でも発電が可能という、デザインと機能性を両立させた展示です。

バス停の屋根

大阪万博 バス停に設置されたペロブスカイト

会場内のバス停の屋根にも、ペロブスカイト太陽電池が設置されています。こちらは積水化学工業が開発を進めるフィルム型で、より軽く、薄く、曲げやすいのが特徴です。国内最大規模となる250mの実証実験が行われており、日中に発電した電力は夜間、バスターミナルの全ての照明に利用される予定です。

これらの展示は、「置き場所がなければ置く、という発想そのものを変える」というペロブスカイト太陽電池のコンセプトを象徴しており、日本の狭い国土でも新たな設置場所を創出できるという課題解決の可能性を示しています。

「ペロブスカイト」という名前、覚えにくい?

「ペロブスカイト」という名前は、確かに「口が噛みそうになる」と表現されるほど、馴染みがなく、覚えにくいと感じる方も多いかもしれません。しかし、この技術はまさに「日本生まれの新技術」であり、エネルギー問題、特に脱炭素社会の実現に向けた日本の「切り札」とも言える存在です。
政府も2040年には原発20基分のペロブスカイト太陽電池を普及させるという目標を設定し、開発者たちは非常に高い期待を背負って研究に取り組んでいます。自然に降り注ぐ太陽エネルギーをそのまま電気に変えられるこの技術は、私たちの身近な場所で使われるようになる可能性を秘めています。
この日本が誇る次世代の技術が、近い将来、自動車をはじめ、建物の壁や窓、さらには各家庭で広く活用され、世界のエネルギー危機を救うことにも繋がるかもしれません。その大きな可能性と、今後の発展に期待せずにはいられません。

 

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