日本の古都 “京都” の “東山” の麓にある“銀閣寺”。
“古都京都の文化財” の一部として世界遺産にも登録されていて、黄金色に輝く “金閣寺” とともに、京都の人気観光スポットになっています。
ただ、”銀閣寺” という名前なのに、銀色ではないので、実物を見て驚く人も少なくありません。
名前は知っていても、建てられた背景や歴史については知らない人も多いのではないでしょうか。
この記事では、京都在住の私が、“銀閣寺”について、建てられた理由や名前の由来などをお伝えします。
“銀閣寺” の歴史
京都東山の麓に建つ “銀閣寺” は、15世紀後半に栄えた、”簡素で洗練された趣” を良しとする、”東山文化” の代表作として知られているお寺です。
正式名称は、”慈照寺(じしょうじ)” といいます。
“東山文化” は、「わび」と「さび」という、”日本人特有の美意識” をベースにしています。
東山文化が栄えた15世紀後半の日本では、落ち着いた作品や質素ながら洗練された美しさを持つ建築、美術品などが多く作られました。
「わび」には、華美な飾りを捨てた、ひっそりとした味わいという意味があり、場所や道具にこだわるより “精神的なもの” を重視するという考えを表します。
「さび」は、古びて趣のあることを意味していて、古くなることで出てくる味わいや、ものや生命が朽ちていく様子に対して、美しいと感じる心を表した言葉です。
華美な装飾、豪華絢爛さを評価するのではなく、”シンプルなもの” や “古くなったもの” の美しさを味わおうとする “東山文化” は、日本ならではの美意識とも言え、”東山文化” を象徴する建造物である “銀閣寺” は、一見の価値のあるスポットとして有名になっているのです。
“金閣寺” との関わり
“銀閣寺” は、室町幕府(1338年 -1573年)の8代目将軍として当時の日本を収めていた “足利義政” が、1482年に開いた山を起源にしています。
“足利義政” の祖父こそ、金箔をふんだんに使った煌びやかな “金閣寺” を建てた “足利義満” で、義政は、祖父とは全く違う趣の寺を建てたことになります。
▼ 金閣寺
“銀閣寺”は、“金閣寺”を見本にして建てられたといわれています。
当初は “銀箔を貼ろうとしたものの、戦乱の時代による財政難のため貼らない形になったのでは…” など、銀閣寺に銀箔が貼られる予定だったのかどうかには諸説あるのですが、当時流行していた “東山文化” を象徴する建物として「わび」「さび」を感じる趣のある建物にしたかったのではと推察されています。
“応仁の乱” を背景に建立
なお、銀閣寺を建てた “足利義政” は、のちに戦国時代と呼ばれる乱世の時代が始まるきっかけとなる、京都を舞台とした戦争 “応仁の乱(1467年 – 1477年)” を引き起こした将軍として知られています。
義政は、東山文化を形成したことで知られているのですが、政治能力には欠けていて、戦乱を治めることができず、1473年に息子に征夷大将軍の職を譲り、そのまま隠居してしまいます。
征夷大将軍の邸宅である室町御所も息子に譲ったため、住居が必要になり、”銀閣寺” のもととなる山荘を建て始めたのです。
“銀閣寺”は、“応仁の乱” が終わった直後の1482年から建設工事が開始されました。
建設工事が始まった翌年の1483年、義政はまだ完成していない “銀閣寺” に引っ越して生活を始めます。
その後、室町幕府が財政難に陥っていたにも関わらず、義政は増税や労役を民衆に押し付けて、“銀閣寺”の工事を続けました。
銀閣寺は、「わび」「さび」という、日本独自の美意識を感じられる素晴らしい場所ですが、当時の人々の苦労のすえあっての美しさなのです。
書画に囲まれて茶の湯に親しみ、優雅な生活を送っていた義政ですが、1490年、“銀閣寺の完成” を見る前に亡くなってしまいます。
義政の住居として建設された“銀閣寺”は、最終的に、義政の菩提を弔うためのお寺として “慈照寺” と名付けられ現在にいたります。
義政死後の “銀閣寺” の歴史
義政の死後、“銀閣寺” は室町幕府の衰えと共に衰退していきます。1550年には、戦乱に巻き込まれ、建物の多くが焼失しました。
その後、江戸時代(1603年 – 1868年)に、当時の幕府からの援助によって、今も残る庭園が築かれ、多くの建物が修復されました。
1994年には、”古都京都の文化財” として世界遺産に登録され、現在は日本国内からだけでなく、世界中から多くの人が足を運ぶ有名な観光地となっています。
銀閣寺で日本特有の “侘び寂び” の美を感じよう!
このように、“銀閣寺” は、豪華絢爛さで有名な “金閣寺” とはまた違った美しさを持つ、日本を代表する観光スポットの1つです。
「わび」「さびという、”日本人特有の美意識” を象徴する場所としても有名なので、気になった人は、ぜひ一度足を運んでみてください。
▼ 慈照寺 銀閣寺
住所:京都市左京区銀閣寺町2
TEL:075-771-5725
アクセス:市バス「銀閣寺前」下車徒歩5分、または市バス「銀閣寺道」下車徒歩10分
参拝時間:春季(3月1日~11月30日)8:30~17:00/冬季 (12月1日~2月末日)9:00~16:30
※ 年中無休
参拝料金:大人(高校生以上)500円、小・中学生300円
https://www.shokoku-ji.jp/ginkakuji/