ラピダスとは?北海道千歳で挑む「2ナノ半導体」と日本の逆襲

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Rapidus

「ニュースでよく聞くラピダスって、結局なんの会社?」 「半導体が大事なのはわかるけど、日本が今さら世界に勝てるの?」 「私たちの生活や株価にどう関係してくるの?」

そんな疑問を持っていませんか?

今、北海道の千歳市で、日本の未来をかけた巨大なプロジェクトが動いています。それが、次世代半導体の国産化を目指す企業「ラピダス(Rapidus)」です。トヨタ自動車NTTソニーといった日本を代表する企業が出資し、国も数兆円規模の支援を行う、まさに「国策」とも言えるこのプロジェクト。

もし成功すれば、AIや自動運転の進化を支える「心臓部」を日本が握ることになり、経済にも大きなインパクトを与えます。しかし一方で、「無謀な挑戦だ」「5兆円もかけて大丈夫か」という厳しい声があるのも事実です。

そこでこの記事では、ラピダスが何を作る会社なのかTSMCとの違い成功の勝算、そして今後の動向について、専門的な話を分かりやすく噛み砕いてお伝えします。

ラピダス(Rapidus)とは?トヨタ・NTT出資の「日の丸半導体」が北海道で目指すもの

Rapidus株式会社トップページキャプチャ

(出典:Rapidus株式会社

ラピダス(Rapidus株式会社) は、2022年8月に設立された日本の半導体メーカーです。「Rapidus」という社名は、ラテン語で「速い」を意味し、その名の通り「スピード」を最大の武器にしようとしています。

「オールジャパン」で挑む国策プロジェクト

ラピダスがただのベンチャー企業ではない理由は、その出資企業の顔ぶれにあります。 設立時には、以下の日本を代表する8社が資金を出しました。

さらに、政府も数千億円から兆円単位の支援を決定しており、まさに「オールジャパン」で挑むプロジェクトと言えます。

作るのは「2ナノメートル」の最先端半導体

ラピダスが目指しているのは、現在の日本で作れる半導体(40ナノメートル台)よりもはるかに微細で高性能な、「2ナノメートル(nm)」世代のロジック半導体です。

「ナノ」とは大きさの単位で、数字が小さいほど回路が細かく、高性能・省電力になります。2ナノメートルというのは、髪の毛の太さの数万分の一という極小の世界。現在、このレベルの量産技術を持っているのは、台湾のTSMC、韓国のサムスン電子、アメリカのインテルといった世界のトップ企業だけです。

日本は半導体製造で「周回遅れ」と言われてきましたが、ラピダスは一気にその差を埋め、世界の最先端に躍り出ようとしているのです。

なぜ北海道・千歳なのか?

ラピダスの製造拠点となる工場「IIM(イーム)」は、北海道千歳市に建設されています。 選定の理由は、広大な土地と豊富な水、そして新千歳空港に近く、世界中から人やモノを集めやすいという立地条件です。 ここでは、単なる工場ではなく、研究開発と製造が一体となった「北海道バレー」構想も描かれています。

ラピダスは何を作る?世界とどう戦う?

半導体を爆速で作るイメージ

「TSMCやサムスンがいるのに、今から参入して勝てるの?」と思うかもしれません。しかし、ラピダスは彼らと同じ土俵で「量」の勝負をするつもりはありません。ラピダスの戦略は明確です。

1. 「専用品」を「爆速」で作る

TSMCなどの既存メーカーは、大量生産が得意な「スーパーマーケット」のような存在です。一方、ラピダスが目指すのは、顧客の要望に合わせた特注品を素早く作る「高級レストランの厨房」のようなスタイルです。

AIや自動運転の進化により、「汎用品」ではなく「専用のAI半導体」が求められるようになっています。ラピダスは、設計から製造までの期間(TAT:ターンアラウンドタイム)を従来の半分以下に短縮することを目指しています。 これを実現するために、以下の革新的な技術を導入しています。

  • 枚葉(まいよう)式処理
    従来の「バッチ式(まとめて処理)」ではなく、ウェハを1枚ずつ処理する方法を採用。AIでデータを解析しながら製造することで、スピードと品質を両立させます。
  • 設計支援AI「Raads」
    半導体の設計自体にもAIを活用し、開発期間を劇的に短縮します。

2. 2ナノの先、「1.4ナノ」も見据える

ラピダスは2027年に2ナノ世代の量産を開始する計画ですが、すでにその先の1.4ナノメートル世代の技術開発も見据えています。 アメリカのIBMやベルギーの研究機関imecと協力し、最先端の技術を導入。技術者をニューヨークへ派遣し、ノウハウを吸収しています。

3. 「後工程」での技術革新

半導体チップを作る「前工程」だけでなく、チップを組み立てて製品にする「後工程」でも革新を起こそうとしています。 特に注目されているのが、ガラス基板を使った技術です。従来のプラスチック基板よりも平坦で熱に強く、高性能なAIチップを作るのに適しています。 2025年12月には、世界最大級の600mm角ガラス基板を用いたパッケージ技術を発表し、あのNVIDIA(エヌビディア)などのAI半導体メーカーからも関心を集めています。

ラピダスに勝算はある?「無理ゲー」と言われる理由と成功への3つの鍵

5兆円規模とも言われる巨額投資が必要なこのプロジェクト。果たして成功するのでしょうか?

「勝算あり」と見る理由

  • 技術的な裏付け
    「半導体の神様」と呼ばれるジム・ケラー氏(AI半導体企業Tenstorrent CEO)が、ラピダスの試作品データを「非常に良い」と高く評価しています。
  • 地政学リスクへの対応
    世界の先端半導体の多くが台湾(TSMC)に集中しており、有事の際のリスクが懸念されています。日本に供給拠点があることは、世界中の企業にとって「保険」としての価値があります。
  • AI需要の爆発
    AIの進化により、半導体不足や電力不足が懸念されています。省電力な先端半導体の需要は、今後も右肩上がりで増え続けると予測されています。

懸念される「失敗のリスク」

  • 巨額のコスト
    工場の建設や装置の導入には莫大な費用がかかります。もし顧客がつかず、工場が稼働しなければ、巨額の赤字を垂れ流すことになります。
  • 「死の谷」
    試作品ができても、それを安定して大量生産(量産)するのは至難の業です。サムスンやインテルでさえ、先端品の「歩留まり(良品率)」向上に苦戦しています。
  • 過去の失敗
    日本は過去に「エルピーダメモリ」や「ルネサス」など、国主導の半導体プロジェクトで苦戦した歴史があります。同じ轍を踏まないかが懸念されています。

日本はどう変わる?私たちの生活への影響

ラピダスが成功すれば、日本の産業構造は大きく変わる可能性があります。

1. 経済効果と雇用

北海道では、ラピダスの進出により関連企業の集積が進み、建設ラッシュや人件費の高騰など、局地的なバブルのような状況も生まれています。数兆円規模の投資は、地域経済に大きな波及効果をもたらします。

2. 「IOWN(アイオン)」構想との連携

NTTが推進する次世代通信基盤「IOWN」とも深く関わっています。IOWNは、電気の代わりに「光」を使って情報を伝える技術で、消費電力を大幅に下げることができます。この光通信を制御するためにも、ラピダスが作るような高性能な半導体が不可欠なのです。 これにより、スマホの充電が長持ちしたり、自動運転がより安全になったりと、私たちの生活も便利になります。

3. 「産業の米」を自国で

半導体は「産業の米」と呼ばれます。これを自国で作れるようになることは、自動車やロボットなど、日本の得意な「モノづくり」産業全体を守り、強くすることにつながります。

株は買える?投資の方法は?

株式チャート

「ラピダスを応援したい!株を買いたい!」と思う方もいるかもしれません。 しかし、現時点で ラピダスは上場していないため、直接株を買うことはできません

ラピダスに投資したい場合は、以下の関連銘柄に注目するのが一つの方法です。

※投資は自己責任で行いましょう。

TSMCとの比較:何が違うの?

TSMC Top Page Capture

(出典:TSMC

よく比較される台湾のTSMCとラピダスですが、目指す方向性は異なります。

特徴TSMC (台湾)ラピダス (日本)
ポジション世界最大のファウンドリ(製造専門)スピード特化型の次世代ファウンドリ
得意分野大量生産(スマホ向けなど)多品種少量生産(AI、専用チップ)
製造方式バッチ式(まとめて処理)枚葉式(1枚ずつ高速処理)
ターゲットApple、NVIDIAなどの大量発注スタートアップや特注AIチップ
強み圧倒的な生産能力と実績開発スピード(TAT)の速さ

ラピダスはTSMCを倒すのではなく、TSMCがカバーしきれない「速さ」や「カスタマイズ」が求められる領域で勝負しようとしています。

そもそも「半導体」って何?

最後に、基本をおさらいしておきましょう。半導体とは、電気を通す「導体(金属など)」と、通さない「絶縁体(ゴムなど)」の中間の性質を持つ物質のことです。

  • 役割
    電気の流れを制御(スイッチング)することで、情報の計算や記憶を行います。
  • 重要性
    スマホ、PC、冷蔵庫、自動車、ミサイルまで、あらゆる電子機器の「脳」として使われています。
  • 進化
    回路を細かくする(微細化)ことで、より多くの計算を、より少ない電力でできるようになります。ラピダスが挑む「2ナノ」は、DNAの鎖の太さに近いレベルの微細さです。

日本の未来を作る「ラストチャンス」に注目しよう

ラピダスは、単なる一企業の挑戦ではなく、日本の技術力と産業の未来をかけたラストチャンスとも言えるプロジェクトです。

2027年の量産開始に向け、工場の建設や試作ラインの稼働など、ニュースは日々更新されています。5兆円という巨額の税金が投入される以上、私たち国民もその行方をしっかりと見守る必要があります。

「無謀だ」と笑うのか、「日本ならできる」と信じるのか。 これからのラピダスの動きから、目が離せません。

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