ランサムウェアの感染防止に有効な対策は?おすすめの防止策やソフトなどを紹介

ランサムウェアの脅威は、もはや他人事ではありません。個人から大企業まで、誰もが標的となり得るこのサイバー攻撃は、私たちのデジタル生活を脅かす深刻な問題です。

感染すると、重要なデータが暗号化され、身代金を要求されるという悪夢のような事態に陥ります。身代金を支払ったとしても、データが復元される保証はなく、むしろさらなる攻撃を招く可能性も。

本記事では、ランサムウェアの基礎知識から、個人・企業が取るべき具体的な対策、万が一感染してしまった場合の対処法まで、網羅的に解説します。あなたの大切なデータを守るために、ぜひ最後までお読みください。

ランサムウェアとは

セキュリティイメージ

ランサムウェアは、感染したコンピュータやサーバー上のファイルを暗号化し、その復号と引き換えに身代金を要求する悪質なマルウェア(悪意のあるソフトウェア)の一種です。身代金は仮想通貨で支払われることが多く、その額は時に数億円に及ぶこともあります。

近年、ランサムウェア攻撃はますます巧妙化・高度化しており、その被害は世界中で拡大しています。標的も個人から大企業、政府機関、医療機関、教育機関など多岐にわたり、社会全体に深刻な影響を与えています。

ランサムウェアの被害事例

2020年には、国内の大手ゲーム会社がランサムウェア攻撃を受け、個人情報などが盗み出される事件が発生しました。また、医療機関や教育機関も標的となり、患者の個人情報や学生の成績情報が流出するケースも報告されています。これらの事件は、ランサムウェアが企業の事業継続や個人のプライバシーを脅かす深刻な脅威であることを改めて示しました。

海外でも、2017年に世界中で猛威を振るった「WannaCry」や、2021年にアメリカの石油パイプライン企業を操業停止に追い込んだ「Colonial Pipeline事件」など、大規模なランサムウェア被害が相次いでいます。これらの攻撃は、社会インフラや経済活動に甚大な被害を与え、私たちの生活にも大きな影響を及ぼしました。

ランサムウェアの感染経路

ランサムウェアは、主に以下のような経路で感染します。

  • 不審なメールの添付ファイルやリンクをクリックする:もっとも一般的な感染経路です。攻撃者は、巧妙に偽装したメールを送り付け、添付ファイルを開かせたり、リンクをクリックさせたりしてランサムウェアを感染させます。件名や本文は、請求書や重要な通知を装っていることが多く、つい開いてしまいがちです。
  • 脆弱性のあるソフトウェアやOSを利用する:ソフトウェアやOSの脆弱性を悪用した攻撃も、ランサムウェア感染の原因となります。古いバージョンのソフトウェアを使い続けたり、セキュリティアップデートを適用しなかったりすると、攻撃者に侵入を許してしまう可能性があります。
  • 感染したWebサイトを閲覧する:悪意のあるコードが埋め込まれたWebサイトを閲覧するだけでも、ランサムウェアに感染することがあります。特に、アダルトサイトや違法ダウンロードサイトなどは、感染リスクが高いので注意が必要です。
  • 不正な広告をクリックする:Webサイトに表示される広告の中には、ランサムウェアを仕込んだ悪質なものが含まれている場合があります。クリックするだけで感染してしまうこともあるので、安易に広告をクリックしないようにしましょう。
  • リムーバブルメディアからの感染:USBメモリや外付けハードディスクなどのリムーバブルメディアも、ランサムウェアの感染源となることがあります。感染した端末に接続したり、不特定多数の人が利用する共用PCに接続したりすると、ランサムウェアが侵入する可能性があります。

ランサムウェア対策・防止策

ランサムウェアの脅威から身を守るためには、日頃から適切な対策を講じることが重要です。以下に、個人・企業が取るべき具体的な対策を紹介します。

基本的な対策

ランサムウェアの感染を予防するために、以下の基本的な対策を徹底しましょう。これらの対策は、個人でも企業でも実践できる基本的なセキュリティ対策であり、ランサムウェアだけでなく、他のマルウェアやサイバー攻撃からの防御にも有効です。

  • OSやソフトウェアを常に最新の状態に保つ
    ソフトウェアの脆弱性を悪用した攻撃を防ぐために、OSやソフトウェアのアップデートは必ず適用しましょう。自動更新を設定しておくと便利です。アップデートには、セキュリティホールを塞ぐための修正プログラムや、新しい機能が含まれていることが多く、常に最新の状態に保つことで、システムの安全性を高めることができます。
  • セキュリティソフトを導入する
    最新のウイルス定義ファイルを備えたセキュリティソフトを導入し、常に最新の状態に保ちましょう。定期的なスキャンも忘れずに行いましょう。セキュリティソフトは、ランサムウェアを含むさまざまなマルウェアを検知・駆除するための重要なツールです。無料のものから有料のものまでさまざまな製品がありますが、重要なのは、自分の利用環境やニーズに合ったものを選び、適切に設定・運用することです。
  • 不審なメールや添付ファイルを開かない
    差出人が不明なメールや、内容が不自然なメールは開かないようにしましょう。添付ファイルを開く際は、セキュリティソフトでスキャンしてから開くようにしましょう。メールは、ランサムウェアをはじめとするマルウェアの感染経路として非常に一般的です。攻撃者は、巧妙な手口でユーザーをだまし、添付ファイルを開かせたり、リンクをクリックさせたりしてマルウェアを感染させます。不審なメールを見分ける能力を養うとともに、添付ファイルを開く際は必ずセキュリティソフトでスキャンする習慣を身に付けましょう。

その他の対策

基本的な対策に加えて、以下の対策も有効です。これらの対策は、より高度なセキュリティ対策であり、ランサムウェアへの感染リスクをさらに低減することができます。

  • 重要なデータはバックアップを取る
    万が一ランサムウェアに感染しても、バックアップがあればデータを復元できます。外部ストレージやクラウドサービスなどを活用し、定期的にバックアップを取りましょう。バックアップは、ランサムウェア対策だけでなく、データ消失のリスクに備えるためにも非常に重要です。3-2-1ルール(コピーを2つ以上作成し、2つの異なるメディアに保存し、1つはオフサイトに保管する)に従って、適切なバックアップ戦略を立てましょう。
  • パスワードを複雑なものにする
    推測されにくい複雑なパスワードを設定し、定期的に変更しましょう。複数のサービスで同じパスワードを使い回すのは避けましょう。パスワードは、アカウントへの不正アクセスを防ぐための重要な要素です。複雑なパスワードを設定し、定期的に変更することで、攻撃者によるパスワードの解読や不正利用を防ぐことができます。パスワード管理ツールを活用するのも有効です。
  • セキュリティに関する情報収集を行う
    最新のセキュリティ情報を入手し、新たな脅威に対応できるようにしましょう。IPA(情報処理推進機構)などのWebサイトを定期的にチェックしましょう。サイバー攻撃の手口は日々進化しており、常に最新のセキュリティ情報を入手し、対策をアップデートしていく必要があります。IPAなどの信頼できる情報源から、セキュリティに関するニュースや注意喚起などを定期的にチェックしましょう。
  • ファイアウォールを活用する
    ファイアウォールは、外部からの不正アクセスを遮断するためのセキュリティ対策です。家庭用のルーターにもファイアウォール機能が搭載されていることが多いので、適切に設定して活用しましょう。ファイアウォールは、外部からの攻撃を検知し、ブロックすることで、ランサムウェアなどのマルウェアの侵入を防ぎます。
  • VPN(仮想プライベートネットワーク)を利用する
    VPNは、インターネット上で安全な通信経路を構築するための技術です。特に、公共Wi-Fiなどセキュリティが確保されていないネットワークを利用する際は、VPNを利用することで、通信内容を暗号化し、盗聴や改ざんのリスクを低減できます。
  • 多要素認証を導入する
    多要素認証は、パスワードに加えて、スマートフォンアプリや生体認証など、複数の認証要素を組み合わせることで、セキュリティを強化する仕組みです。重要なアカウントには、多要素認証を導入することで、不正アクセスを防ぐことができます。
  • 従業員教育を実施する
    企業においては、従業員へのセキュリティ教育が非常に重要です。ランサムウェアの感染経路や対策、不審なメールの見分け方などを、定期的に教育することで、従業員のセキュリティ意識を高め、ヒューマンエラーによる被害を防ぐことができます。

おすすめのランサムウェア対策ソフト・ツール

ランサムウェア対策には、以下のようなソフト・ITツールの導入をご検討ください。個人向けと法人向け、それぞれ紹介します。

個人向けのランサムウェア対策ソフト・ツール

Microsoft Defender

Microsoft Defender

(出典:Microsoft公式サイト

Windowsに標準搭載されているセキュリティソフトです。無料で利用でき、基本的な保護機能を備えています。Microsoft Defenderは、リアルタイム保護、クラウド保護、ランサムウェア保護などの機能を備えており、基本的なセキュリティ対策としては十分な性能を持っています。ただし、より高度な保護を求める場合は、他のセキュリティソフトの導入も検討しましょう。

ウイルスバスター クラウド

ウイルスバスター クラウド

(出典:TREND MICRO公式サイト

トレンドマイクロ社のセキュリティソフトです。ランサムウェア対策機能が充実しており、初心者でも安心して利用できます。ウイルスバスター クラウドは、AI技術を活用した高度な脅威検知機能や、フォルダシールド機能(特定のフォルダへのアクセスを制限する機能)などを備えており、ランサムウェアからの保護に特化した機能が充実しています。

ウイルスバスター クラウド
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ESET インターネット セキュリティ

ESET インターネット セキュリティ

(出典:キヤノンマーケティングジャパン公式サイト

ESET社のセキュリティソフトです。高い検知率と軽快な動作が特徴で、上級者にもおすすめです。ESET インターネット セキュリティは、高度なヒューリスティック技術やサンドボックス機能などを駆使して、未知の脅威も検知することができます。また、ゲームモードやペアレンタルコントロールなどの機能も充実しており、さまざまなニーズに対応できます。

ESET インターネット セキュリティ
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企業向けのランサムウェア対策ソフト・ツール

CylancePROTECT

CylancePROTECT

(出典:BlackBerry公式サイト

BlackBerry社のセキュリティソフトです。AI技術を活用した高度な脅威検知機能を備えています。CylancePROTECTは、従来のシグネチャベースの検知方式ではなく、機械学習アルゴリズムを用いて未知の脅威も検知することができます。また、軽量なエージェントとクラウドベースの管理コンソールにより、導入・運用も容易です。

CrowdStrike Falcon

CrowdStrike Falcon

(出典:CrowdStrike公式サイト

CrowdStrike社のセキュリティソフトです。クラウドベースのEDR(Endpoint Detection and Response)機能により、ランサムウェアの侵入を早期に検知・対応できます。CrowdStrike Falconは、エンドポイントの挙動をリアルタイムで監視し、不審な活動を検知するとアラートを発信します。また、感染した端末を隔離したり、ファイルをロールバックしたりするなどの対応も可能です。

Sophos Intercept X

Sophos Intercept X

(出典:SOPHOS公式サイト

Sophos社のセキュリティソフトです。ディープラーニング技術を活用した高度なマルウェア対策機能と、EDR機能を統合した製品です。Sophos Intercept Xは、ランサムウェアの挙動を分析し、暗号化プロセスを阻止する機能を備えています。また、感染した端末の調査や復旧もサポートします。

LANSCOPE エンドポイントマネージャー オンプレミス版

LANSCOPE エンドポイントマネージャー オンプレミス版

(出典:LANSCOPE公式サイト

エムオーテックス社のIT資産管理・情報漏えい対策ソフトです。ファイルの自動バックアップ機能や、不正なアクセスを検知・遮断する機能などを備えています。LANSCOPE エンドポイントマネージャー オンプレミス版は、ランサムウェア対策だけでなく、IT資産管理や情報漏えい対策など、企業のセキュリティ対策全般をサポートする包括的なソリューションです。

ランサムウェアに感染したらどうする?

万が一ランサムウェアに感染してしまった場合は、落ち着いて以下の手順で対処しましょう。焦って身代金を支払ったり、自己判断で復旧を試みたりすると、状況が悪化したり、さらなる被害を招いたりする可能性があります。

感染時の対応

感染端末をネットワークから隔離する

他の端末への感染拡大を防ぐために、感染した端末はすぐにネットワークから切り離しましょう。Wi-FiやLANケーブルを抜くなどして、物理的に接続を遮断してください。ランサムウェアの中には、ネットワークを介して他の端末に感染を広げるタイプのものも存在します。感染端末を隔離することで、被害の拡大を防ぐことができます。

警察やIPAなどの窓口に相談する

警察やIPA(情報処理推進機構)などの専門機関に相談しましょう。適切なアドバイスや支援を受けることができます。ランサムウェアへの感染は犯罪であり、警察に被害届を出すことが重要です。また、IPAなどの専門機関は、ランサムウェアに関する情報提供や技術的な支援を行っています。

その他の対応

身代金の支払いは避ける

身代金を支払っても、データが復元される保証はありません。また、犯罪者を助長することにもつながります。身代金を支払うことは、攻撃者にとっての成功体験となり、さらなる攻撃を誘発する可能性があります。また、身代金を支払っても、データが復元されないケースや、復元されたデータが破損しているケースも報告されています。

バックアップからデータを復元する

バックアップがあれば、感染前の状態にデータを復元できます。復元する前に、感染端末を完全に駆除してください。バックアップは、ランサムウェア対策における最後の砦です。定期的にバックアップを取っておくことで、万が一感染した場合でも、被害を最小限に抑えることができます。

セキュリティソフトで駆除する

セキュリティソフトを最新の状態に更新し、感染端末をスキャンしてランサムウェアを駆除しましょう。セキュリティソフトによっては、ランサムウェアの駆除に特化した機能を備えているものもあります。駆除が難しい場合は、専門業者に依頼することも検討しましょう。

感染経路を特定し、再発防止策を講じる

ランサムウェアに感染した経路を特定し、同じような被害を繰り返さないように対策を講じることが重要です。脆弱性のあるソフトウェアをアップデートしたり、セキュリティ教育を実施したりと、根本的な対策を行いましょう。

ランサムウェアの最新動向と今後の対策

ランサムウェアの脅威は日々進化しており、攻撃者は常に新たな手口を開発しています。以下に、最新のランサムウェア動向と今後の対策について解説します。

最新のランサムウェア動向

二重恐喝型ランサムウェアの増加:従来のランサムウェアは、ファイルを暗号化し、復号と引き換えに身代金を要求するものが主流でした。しかし、近年では、ファイルを暗号化するだけでなく、盗み出したデータを公開すると脅迫する「二重恐喝型」ランサムウェアが増加しています。これにより、被害者は、データの復元だけでなく、情報漏えいによる評判の失墜のリスクにも直面することになります。

サプライチェーン攻撃の増加:サプライチェーン攻撃とは、攻撃対象の大企業の子会社や取引先を通じて、大企業のシステムに侵入する攻撃手法です。中小企業は大企業と比較してセキュリティ対策が甘いことが多く、このような手口が使われます。サプライチェーン攻撃が利用されるケースは増加しており、大企業から中小企業まで高度なセキュリティ対策を実施することが求められています。

標的型攻撃の高度化:特定の企業や組織を狙った標的型攻撃も、ますます高度化しています。攻撃者は、標的となる企業の情報を事前に収集し、脆弱性やセキュリティ対策の抜け穴を突いて攻撃を仕掛けてきます。

今後の対策

ゼロトラストセキュリティの導入:ゼロトラストセキュリティとは、「すべてのアクセスを信頼しない」という原則に基づいたセキュリティ対策です。従来の境界型セキュリティでは、内部ネットワークからのアクセスは信頼するという前提がありましたが、ゼロトラストセキュリティでは、すべてのアクセスに対して認証と認可を行い、常に監視することで、不正アクセスを防ぎます。

EDR(Endpoint Detection and Response)の活用:EDRは、エンドポイントの挙動をリアルタイムで監視し、不審な活動を検知・対応するセキュリティ対策です。ランサムウェアなどのマルウェアの侵入を早期に検知し、被害を最小限に抑えることができます。

セキュリティ意識の向上:ランサムウェア対策においては、技術的な対策だけでなく、従業員のセキュリティ意識の向上が不可欠です。定期的なセキュリティ教育や訓練を実施し、不審なメールの見分け方や、安全なパスワードの管理方法などを周知徹底しましょう。

ランサムウェア対策を講じよう!

ランサムウェアは、私たちのデジタル生活を脅かす深刻な脅威です。しかし、適切な対策を講じることで、感染のリスクを大幅に減らすことができます。本記事で紹介した対策を実践し、大切なデータを守りましょう。

もし、ランサムウェアに感染してしまった場合は、慌てずに専門機関に相談しましょう。適切な対処をすることで、被害を最小限に抑えることができます。ランサムウェアの脅威から身を守るために、一人ひとりがセキュリティ意識を高め、安全なデジタル社会を築いていきましょう。

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