Amazonの新OS「Vega OS」とは?Fire TV Stick 4K Selectで何が変わるのか徹底解説!
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テレビに接続するだけで、AmazonプライムやNetflix、Hulu、U-NEXTなどの動画配信サービスを大画面で手軽に楽しめるFire TV Stick(ファイヤーTVスティック)は、その手軽さと定期的なセール価格により、世界中で非常に人気の高いストリーミングデバイスです。
しかし2025年9月、AmazonはFire TVのラインナップにおいて、これまでの仕組みを大きく変える新しい試みを発表しました。それが、新開発のオペレーティングシステム(OS)「Vega OS(ベガOS)」の導入です。
Fire TVデバイスの人気の大きな理由の一つは、AndroidベースのOSによる高い柔軟性にありましたが、Amazonはこの「Androidからの脱却」を進めています。
本記事では、Amazonの新しいストリーミングデバイス「Fire TV Stick 4K Select」に搭載された「Vega OS」とは何か、従来のFire OSと何が異なるのか、そして私たちユーザーのストリーミング生活にどのような影響をもたらすのかを詳しく解説していきます。
- Amazonの新OS「Vega OS」とは?Fire TVの未来を変える次世代システム
- Androidベースの「Fire OS」と「Vega OS」の決定的な違い
- Vega OS搭載「Fire TV Stick 4K Select」の魅力とメリット
- Vega OS導入によるデメリットと「非公式アプリ」の行方
- サイドローディング(非公式アプリのインストール)の無効化
- Kodiなどの人気アプリが使えなくなる可能性
- アプリのエコシステムがより限定的になる
- Fire TV Stick 4K Selectのハードウェア仕様の一部低下
- AmazonはAndroidを捨てるべきだったのか?ユーザーの評価と市場の動向
- 既存のFire TVデバイス(Fire OS搭載機)は今後どうなる
- 新旧ユーザー必見!Vega OSの登場がストリーミング生活にもたらす大きな変化
Amazonの新OS「Vega OS」とは?Fire TVの未来を変える次世代システム
Vega OSの基本情報:Linuxベースの自社開発OS
Vega OS(ベガOS)は、Amazonが自社で新たに開発したオペレーティングシステムです。従来のFire OSがGoogleのAndroidをベースに開発されていたのに対し、Vega OSはLinuxベースで構築されています。
AmazonがVega OSの開発を進めているという噂は2024年初頭から流れていましたが、2025年9月30日(日本時間10月1日)のAmazonのデバイスイベントにおいて正式に発表されました。
Vega OSは、Fire TVデバイス以外にも、既にEcho ShowやEcho Spotなどの既存のAmazonデバイスに統合されて使用されています。そして、Fire TVデバイスとして初めてこの新OSを搭載したのが、同時に発表された「Fire TV Stick 4K Select」です。
Amazonは、この新OSを搭載した「Fire TV Stick 4K Select」を、税込7,980円という手頃な価格で提供開始し、4Kラインナップの拡充を図っています。
Androidベースの「Fire OS」と「Vega OS」の決定的な違い
これまでAmazonのストリーミングデバイスに搭載されてきた「Fire OS」と、新たに登場した「Vega OS」との間には、その根幹となる仕組みに大きな違いがあります。
OSの基盤技術とアプリ形式の違い
特徴 | Fire OS(従来のFire TV Stickなど) | Vega OS(Fire TV Stick 4K Selectなど) |
---|---|---|
OSの基盤 | Androidベース | Linuxベース |
アプリ形式 | APKファイル | .vpkgファイル (Webページベース) |
アプリの互換性 | Androidアプリの多くと互換性がある | 既存のFire TVアプリとは互換性がない |
サードパーティ製アプリ | 設定でサイドローディング可能 | Amazon Appstoreからのアプリのみ |
Vega OSがLinuxベースであるのに対し、従来のFire OSはAndroidベースのOSでした。この基盤の違いが、アプリの互換性に最も大きな影響を与えます。
従来のFire OSで動作していたAndroidアプリ(.apkファイル)は、Vega OS搭載のFire TVデバイスでは一切動作しません。開発者は、Vega OSデバイスでアプリを動作させるために、Vega OS専用のバージョンを新たに作成する必要があります。
Amazonは開発者向けにVega OSの技術文書を公開していますが、Vega OSアプリは本質的にウェブページのような構造をしており、OS自体が「専用に構築されたウェブブラウザ」のようなものと説明されています。これは一般的なストリーミングアプリにとっては問題ありませんが、ゲームやユーティリティなどの一部のFire OSアプリは、Vega OS向けに再構築が不可能になる可能性が示されています。
Vega OS搭載「Fire TV Stick 4K Select」の魅力とメリット
(出典:Amazon)
新しいVega OSを導入したFire TV Stick 4K Selectには、ユーザーにとっていくつかのメリットがあります。
驚異的な低価格とコストパフォーマンスの向上
Vega OSの導入における最大のメリットの一つは、デバイス価格の低減です。
Fire TV Stick 4K Selectは、4K対応デバイスながら、税込7,980円という手頃な価格設定がされています。Vega OSはFire OSに比べてシンプルなプラットフォームであり、デバイスのハードウェアに要求されるリソースが少ないため、従来のFire OS搭載モデルよりも約5ドルから10ドル安価にリリースできるとされています。
この価格設定は、Rokuなどの競合他社に対抗する上でも重要視されています。
高速化されたパフォーマンスと効率性
Amazonは、新しいFire TV Stick 4K Selectが、新OS「Vega」によって超高速なスピードを実現したと述べています。
Vega OSは軽量設計であるため、従来のAndroidベースのFire OSと比較してシステムのオーバーヘッドが少なく、より少ないRAMでも効率的に動作します。これにより、ナビゲーションの応答性が向上し、動きのスムーズさを感じられる可能性があります。
XboxゲームやAlexa+などの新機能への対応
Fire TV Stick 4K Selectは、ストリーミング機能に加えて、以下の魅力的な新機能に対応しています。
- Alexa+の採用
新しいAIアシスタント機能「Alexa+」がFire TVデバイスの全ラインナップに採用され、Fire TV Stick 4K Selectにも搭載されています。Alexa+により、より自然な会話を通じてコンテンツの検索や再生が可能となり、特定の映画のシーンへのジャンプ、スポーツの試合結果の確認、スマートホーム製品の操作などが簡単に行えます。 - クラウドゲーミング対応
ゲーム機本体がなくても、XboxゲームやAmazonのゲームプラットフォームLunaなどのクラウドゲーミングサービスを大画面で楽しむことが可能になります(Xbox機能は近日ソフトウェアアップデートで対応予定)。
高画質ストリーミングのサポート
Fire TV Stick 4K Selectは、その名称の通り4Kの高画質ストリーミングに対応しており(3840×2160ピクセル)、HDR10+、HDR10、HLGなどのHDRフォーマットをサポートしています。
Vega OS導入によるデメリットと「非公式アプリ」の行方
Vega OSの導入は、特にFire TVの柔軟性を求めてきた上級ユーザーにとって、非常に大きな制約となります。
サイドローディング(非公式アプリのインストール)の無効化
Vega OSで最も批判を集めている変更点は、サイドローディング(非公式な方法でのアプリインストール)がサポートされないことです。
Amazonは、Fire TV Stick 4K Selectでは「Amazon Appstoreのアプリのみがダウンロード可能」であると明言しており、「不明なソースからのインストール」オプションがVega OSデバイスには存在しない可能性が高いです。この変更は「セキュリティ強化のため」とされています。
従来のFire TVデバイスは、Androidベースであるという特性から、Amazon Appstoreにないアプリ(サードパーティ製アプリ)を外部からインストールできる「サイドローディング」が可能であったため、多くのユーザーから支持されてきました。
Kodiなどの人気アプリが使えなくなる可能性
サイドローディング機能の無効化は、特にKodiのような人気のあるメディアセンターソフトウェアを利用してきたユーザーにとって致命的です。
Kodiや、Ocean Streamz、Flix VisionといったサードパーティのAPKアプリへのアクセスが大幅に制限されることになります。Fire TVデバイスが強力な支持を得た主な理由の一つがこのサイドローディング機能であったため、この制限により多くの「コードカッター」と呼ばれるユーザー層がAmazonデバイスから離れることが予想されています。
アプリのエコシステムがより限定的になる
Fire OS搭載機でもGoogle Playストア(Google TVに対応したアプリ)と比較してアプリ数が少ないというデメリットがありましたが、Vega OSでは既存のFire OSアプリも動作しないため、アプリのエコシステムがさらに限定的になる恐れがあります。
アプリ開発者はVega OS向けのアプリ(.vpkg)を新規に作成する必要があるため、特に小規模なユーティリティアプリやゲームなどは、Vega OS版がリリースされない可能性があります。
Fire TV Stick 4K Selectのハードウェア仕様の一部低下
「Fire TV Stick 4K Select」はコストパフォーマンスを追求したモデルであるため、従来の4Kモデルと比較して一部のハードウェア仕様が「ダウングレード」されています。
- RAM
1GBに減少(従来の4Kモデルは1.5GBまたは2GB)。 - Wi-Fi
Wi-Fi 6ではなくWi-Fi 5に対応。 - HDR/オーディオ
Dolby Visionがサポートされません。また、Dolbyオーディオはパススルーのみでデコード機能がないため、Alexaに話しかける際に映像が一時停止するなど、音声コマンドの使い勝手が低下する可能性があります。
AmazonはAndroidを捨てるべきだったのか?ユーザーの評価と市場の動向
AmazonがFire TVデバイスの基盤をAndroidベースのFire OSから、自社開発のLinuxベースのVega OSへと移行し始めたことは、ストリーミングデバイス市場における大きな論点となっています。
AmazonにとってのVega OSの意義
AmazonがVega OSを導入する背景には、OSの独立性の確保と収益機会の最大化があります。
- 完全なコントロール
AndroidベースのOSから離れることで、Amazonはデバイス上で提供される機能やユーザー体験を完全に制御できるようになります。 - 低コスト化と市場シェア
ハードウェアの要件が少ない軽量なOS(Roku OSのモデルに近いという意見もある)を採用することで、より安価なデバイスを提供し、市場シェアの拡大を狙えます。 - セキュリティと収益
サイドローディングを無効にすることで、アプリをAmazon Appstore経由に限定し、セキュリティを強化しつつ、アプリのサブスクリプションや購入からの手数料収入を確保する狙いがあります。Amazonは自社のシステムに留まらせ、Amazonの広告やPrime Videoのコンテンツを推奨したい意図が強くあります。
ユーザー層からの厳しい評価
しかし、特にカスタマイズ性や非公式アプリの利用を重視してきた「コードカッター」と呼ばれる層からは、このVega OSへの移行に対して厳しい意見が出ています。
サイドローディング機能の喪失は、柔軟性の制限に直結します。専門家の中には、この制限されたアプリライブラリとサイドローディング機能の無効化はFirestickデバイスの「終わりの始まり」であると見なす意見もあります。
そのため、柔軟性を求めるユーザーは、ウォルマートのOnn 4K ProのようなAndroid TV / Google TVベースの競合デバイスへ移行する可能性が高いとされています。Amazonが、ユーザーの多くが求めていたカスタマイズ性を犠牲にしてまで閉鎖的なシステム(Roku OSに類似)へ移行したことが、長期的に見てユーザーベースを遠ざける結果につながるかどうかが今後の焦点となります。
既存のFire TVデバイス(Fire OS搭載機)は今後どうなる
Fire TV Stick 4K SelectがVega OSを搭載して登場しましたが、現在市場に出ている、あるいは今後もリリースされるFire OS(Androidベース)搭載のFire TVデバイスがすぐに消えるわけではありません。
Fire OSデバイスは当面継続とアップデートが提供される
Amazonは、Vega OSはあくまで「代替オプション」であり、Fire OSがなくなるわけではないと明言しています。
- 既存デバイスのサポート
既に販売されている既存のFire TVデバイスは、引き続きAndroidベースのFire OSを使用し、ソフトウェアアップデートを受け取ることになります。既存のAndroidモデルがVega OSにアップグレードされることはありません。 - Fire OSの新モデル
Amazonは、今後も引き続きAndroidベースのFire OSを実行する新しいFire TVデバイスをリリースする計画であると明確に述べています。このため、Fire TVのラインナップは当面、Vega OSとFire OSの二本立てとなる見込みです。 - パートナー企業製TV
PanasonicやTCLなどのパートナー企業が製造するFire TV Edition TVは、少なくとも当面はAndroid 14ベースのFire OSを使い続けると予想されており、これは主要なアプリの互換性を保つための「二本立てのアプローチ」を裏付けています。
Amazonが長期的にAndroidデバイスを段階的に廃止し、最終的にVega OSに一本化していく可能性は示唆されていますが、現時点では、ユーザーはFire OS搭載の現行モデル(Fire TV Stick 4K Maxなど)を選ぶ限り、Androidの柔軟性を維持することができます。
新旧ユーザー必見!Vega OSの登場がストリーミング生活にもたらす大きな変化
Amazonが自社開発の「Vega OS」を導入した「Fire TV Stick 4K Select」(税込7,980円)は、ストリーミングデバイス市場における大きな転換点です。
Vega OSの導入は、AmazonにとってはOSの独立性とコスト削減、そして公式アプリストアへの誘導による収益確保という戦略的なメリットがあります。そしてユーザーにとっては、4K対応デバイスをより安価に入手できるという恩恵があります。Alexa+などの新機能により、コンテンツへのアクセスもスムーズになるでしょう。
しかし、その安価な価格と引き換えに、従来のFire TVの最大の魅力であった柔軟性が失われるという、重大なトレードオフが発生します。
OSが変わったことで安価になったのは良いものの、Kodiなどの非公式アプリを支えてきたサイドローディング機能が基本的に無効化されたため、今まで使えていたアプリが使えなくなる可能性が極めて高くなります。
したがって、Fire TV Stick 4K Selectを選ぶ際は、Amazon Appstore内の公式ストリーミングサービスのみを利用するかどうかが、重要な判断基準となります。もし、カスタマイズや非公式アプリの利用を前提とするならば、当面は引き続きAndroidベースのFire OSが搭載される既存のハイエンドモデル(Fire TV CubeやFire TV Stick 4K Maxなど)を選択するか、Google TVなどの競合デバイスを検討するのが賢明と言えるでしょう。
Vega OSは、Fire TVデバイスの新たなスタンダードとなる道を歩み始めましたが、その未来がユーザーにとって「楽な」ものになるか、「制限された」ものになるかは、今後のアプリ開発者の対応とAmazonの戦略にかかっています。