モバイルバッテリーは飛行機内に持ち込める?持ち込みのルールと預けてしまった場合の対処法
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外出先でスマホを充電するのに便利なモバイルバッテリー。旅行や出張のときに持参されるケースも多いですが、気をつけなければならないのは飛行機に乗る際です。モバイルバッテリーは火災の恐れがある危険物なので、飛行機で輸送する際には取り扱いが制限されます。
今回は、モバイルバッテリーを飛行機に持ち込む場合のルールや注意点について解説します。以下を把握しておけば、モバイルバッテリーを持参して飛行機に乗る際も安心です。
モバイルバッテリーは持ち込み可能!預けるのはNG
モバイルバッテリーを手荷物として飛行機内に持ち込むことは、国内線・国際線ともに可能です。ただし、後述するように、持ち込めるモバイルバッテリーにはいくつかのルールや注意事項があります。
一方、モバイルバッテリーを預け入れることは安全性の観点から禁止されています。2016年4月1日から国際民間航空機関(ICAO)によって禁止されており、国内線・国際線、航空会社を問わず、原則として預けられません。
モバイルバッテリーを飛行機に預けられない理由
飛行機の搭乗時、モバイルバッテリーを預けられない理由は、火災の危険があるリチウムイオン電池が使用されているからです。
リチウムイオン電池はエネルギー密度が高く、圧力や熱、電気などの刺激が加わると発熱・破裂・発火の恐れがあります。事実、米国の航空会社では、機内でリチウム電池が異常発熱する「熱暴走」の事例が、週一回以上のペースで頻発しているといいます。機内手荷物のリチウム電池が発火し、フライトが中止になったり、飛行機が緊急着陸したりする事例もありました。
客室でリチウムイオン電池が発火した場合は、旅客や客室乗務員によってすぐに発見、対処される可能性が高いです。一方、人の目が届きにくい預け入れ手荷物の中で発火すると、発見が遅れ、取り返しのつかない大惨事を生むことも考えられます。以上より、安全性を考慮し、モバイルバッテリー(リチウムイオン電池)を預けることは禁止されています。
モバイルバッテリーを飛行機内に持ち込む際のルール
発火の恐れのあるモバイルバッテリーは本来危険物として扱われますが、一定のルールを満たすことで「予備電池」として飛行機内への持ち込みが認められます。飛行機内に持ち込めるモバイルバッテリーの基本的な条件は以下の通りです。
1個あたりの容量は160Wh以下
飛行機内に持ち込めるモバイルバッテリーは160Wh以下のものに限ります。160Whを超えるものは、法令で航空輸送が禁止されている危険物に該当します。
ちなみにWhとは、モバイルバッテリーを含めたポータブル電源のバッテリー容量を表す単位です。 具体的には、時間(h)あたりの消費電力(W)を表します。読み方は「ワットアワー」、日本語で「ワット時定格量」ともいいます。
例えば、100Whとは、100Wの電化製品を1時間充電できるという意味です。Whが大きくなるほどエネルギー密度も高くなり、発火・破裂の危険性も上がると考えられます。
Whが不明な場合は持ち込み禁止
ワット時定格量(Wh)の記載がないモバイルバッテリーが多く流通しております。
リチウムイオン電池が内蔵されたモバイルバッテリーは、ワット時定格量(Wh)が160Wh以下の場合には、機内持ち込みが可能です。ただし、ワット時定格量(Wh)が不明な場合には、160Whを超える場合と同様に、機内持ち込み・お預けともに不可となります。
出典:ANA「手荷物について(お預けのお手続きや機内持ち込み、検査について)(国内線)」
モバイルバッテリーには、Whの記載のないものも多く出回っています。Whが不明な場合、160Whを超える場合に準ずる扱いとして、機内持ち込みはできないので注意しましょう。
なお、日本においては、Whが記載されていなくても、規定を満たしていれば基本的に持ち込みが可能です。後述するmAhからWhの変換式やメーカーへの問い合わせなどで、160Wh以下であることが確かめられていれば問題ありません。搭乗時もとくにチェックされないのが一般的です。
一方、海外の場合はチェックが厳しいこともあるので注意してください。例えば、中国の場合、国内線・国際線ともに、Whの記載がないモバイルバッテリーは持ち込みができないことがあります。当日泣く泣く処分しなければならないといったことがないよう、事前に航空会社各社や各国の規定を確認しておきましょう。
mAhはWhに変換して判断
モバイルバッテリーの容量表示には、WhではなくmAh(ミリアンペアアワー)が用いられることも多いです。日本の電気用品安全法令やJISでもAhが推奨されており、むしろmAhのほうが主流ともいえます。
mAhは「3.7(V) × mAh ÷ 1000」の計算式でWhに変換することが可能です。3.7は、リチウムイオン電池の電圧のこと。mAh表記でも、Whに変換して160 Wh以下、すなわち43,243mAhの場合、機内持ち込みが認められます。
・WhとmAhの対照表
160Wh | 43,243mAh |
100Wh | 27,027mAh |
ちなみにmAhとは、時間あたりの放電容量を示す値です。1mAhは、1mAを1時間流せることを示します。よって、例えば、9000mAhのモバイルバッテリーは、3000mAh(3A)の電子機器に3時間電流を流すことが可能です。
容量100Wh超えは2個まで
モバイルバッテリーのうち、100Whを超える(100〜160Wh)ものは2個まで持ち込みが可能です。mAhで言えば、 27,027〜43,243mAhのものは2個までとなります。
100Wh以下はいくらでも
モバイルバッテリーの容量が100Wh(27,027mAh) 以下の場合、個数に制限はありません。何個でも持ち込みが可能です。
乾電池・ニッケル水素電池・ニカド電池は制限なし
機内の持ち込みや預けが制限されるのは、発火・爆発の恐れがあるリチウムイオン電池を使用したモバイルバッテリーに限ります。
乾電池・ニッケル水素電池・ニカド電池(ニッカド電池) のバッテリーについては「非危険物」に分類されるため、とくに取り扱いに制限はありません。よって、飛行機に搭乗する際は、そうしたリチウム電池以外のモバイルバッテリーを持参するのもよいでしょう。
ただし、航空会社によっては、リチウム電池以外の電池にも制限が設けられている場合があります。
航空会社ごとのルールもチェック
モバイルバッテリーの持ち込みルールは、航空会社ごとに異なる場合があります。とくに海外の航空会社では、独自の規制が設けられていることも多いので注意してください。
航空会社によってルールに差が出るのは、主に以下のような部分です。
- 100Wh以下の持ち込み個数を制限している場合がある
- 100〜160Wh以下で事前の承認や許可が必要な場合がある
- フライト中の使用が制限されている場合がある
とりわけ注意すべきなのが、モバイルバッテリーの持ち込みについて、事前承認・許可が求められる場合があることです。お問い合わせフォームやメール、チェックインカウンターなどで申告、申請しなければモバイルバッテリーを持ち込めないことがあります。
以下では、主な航空会社のモバイルバッテリー取り扱いルールをまとめたので参考にしてください。
・航空会社各社のモバイルバッテリー取り扱いルール
日本の航空会社 |
・ワット時定格量が100Wh以下のものは持ち込み可能 ・ワット時定格量が100Whを超え160Wh以下のものは2個まで ・ワット時定格量(Wh)が不明な場合には持ち込み不可 ※短絡(ショート)しないように個別に保護してあるもの |
・160Wh未満の電池2個まで ・航空会社の承認が必要 |
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・最大160Whのリチウムバッテリー2個まで ・硬貨、鍵、宝石類などの金属に接触しないようにする、バッテリーを破損、破裂、圧迫しないようにする |
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・160Wh以下、2個まで ・硬貨、鍵、宝石などの金属物から遠ざけて保管 ・元の小売用パッケージに入れて保管、もしくは端子にテープを貼るか、個別のビニール袋または保護ポーチに入れる |
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・100Wh~160Whは運送業者の承認を得た後に持参可能 ・飛行中は電子機器への充電禁止 ・開始スイッチ付きの場合は飛行中は常にオフにする |
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・携行する電子機器と互換性が必要 ・100Wh以下では申告不要、個数は20 個以下 ・100Wh以上160Whはチェックインまたは搭乗時に申告、携帯可能個数は最大2個 |
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・100Wh以上160Wh未満の携行には、航空会社の承認を得ること ・短絡(ショート)を防止するために予備電池を個別に十分に保護する |
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・容量160Wh以下 ・バッテリーは機器から取り外す必要あり ・電源を切ったままにし、フライト中に使用は不可 |
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エバー航空(台湾) |
・100Wh以下の場合は20個までお預けが可能、20個を超える場合、航空会社による承認が必要 ・100Wh ~ 160Whを最大2個まで、機内持ち込み手荷物として持ち込みが可能 ・ショート防止のための対策を講じる ・仕様や数値が明記されていない場合は持ち込み不可 |
・1人2個まで ・損傷やショート防止を施している ・100Wh超え160Wh未満では、航空会社の承認が必要 |
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カンタス航空(オーストラリア) |
・100Wh超え160Wh以下はチェックインの際に申告、許可が必要。 ・100Wh超え160Wh以下は最大2個 ・100Whを超えない場合の申告・許可は不要 ・電池の端子を保護すること(例: 露出部分にテープを貼る) |
・100〜160Whは2個まで ・100〜160Whは損傷や短絡から保護し、機内持ち込み手荷物に入れる |
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・100Wh未満は 20個まで、それを超える場合は事前許可が必要 ・100〜160Wh以下は2個まで ・100〜160Wh以下は エールフランス航空または旅行代理店から事前許可を得ること |
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・ショートや破損を起こさないよう対策を講じる ・Whの記載がない場合、または確認できない場合は持ち込み不可 ・100Wh以下は4個まで ・100〜160Whは2個まで、事前の許可・連絡は不要 |
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イベリア航空(スペイン) |
・100Wh以下は4個まで ・ 100 Wh超え160Wh以下は 2個まで ・ ショートを防止するため、端子を絶縁する |
・100Wh以下は20個まで ・ 100Wh超え160Wh以下は2個まで、航空会社の輸送許可が必要 ・ フライト予約時に、お問い合わせフォームからモバイルバッテリーを登録して許可を申請 ・ 短絡を防止するため、端子は個別に絶縁する |
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エミレーツ航空(ドバイ) |
・100Wh以上160Wh以下、承認が必要 |
・100Wh以下、20個まで ・ 同様の制限を乾電池、アルカリ電池、ニッケル、カドミウム、電池など、すべての電池に適用 ・100〜160Wh、2個まで |
モバイルバッテリーを預けてしまった場合の対処法
誤ってモバイルバッテリーを預けてしまった場合は、航空会社の手荷物カウンターでその旨を申告しましょう。引換番号を伝えて荷物を一旦戻してもらい、モバイルバッテリーを取り出して、再度荷物を預け直します。
なお、一部の地方空港や格安航空会社を除き、危険物のX線チェックは荷物を預けた後に行われます。そのため、モバイルバッテリーを預けたまま放置しておくと、後から館内放送で呼び出されることになるので注意しましょう。
機内登場後に呼び出しを受けたり、その結果フライトが遅延してしまったりする恐れもあります。出発前に不快な思いをしないためにも、預けたことに気づいた時点ですみやかに申告し、モバイルバッテリーを取り出すのが最善策です。
国際線では勝手に荷物を開けられることもある
国内線では、X線チェックで危険物が見つかったとしても、勝手に荷物を開けられることは基本的にないといいます。搭乗口に呼ばれて、持ち主立ち会いのもと、中身のチェックが行われるのが一般的です。
一方、危険物の取り締まりが厳しい国際線や海外の航空会社では、この限りではありません。鍵を壊して勝手に荷物を開けられ、モバイルバッテリーが処分されてしまうこともしばしばです。バッテリーが処分されるだけならまだしも、その際に貴重品が盗まれたり、その他の荷物が紛失したりする恐れもあります。
よって、国際線の場合は特に、モバイルバッテリーを預けないように留意してください。
搭乗の際はモバイルバッテリーを預けないように!
モバイルバッテリーを飛行機の預け入れ手荷物に含めることは禁止です。一方、以下の条件を満たせば、機内への持ち込みは認められます。
モバイルバッテリーの持ち込みルール
- 1個あたりの容量は160Wh(43,243mAh)以下
- 100Wh(27,027mAh)以下の製品は2個まで
- 100Wh(27,027mAh)未満の持ち込みは無制限
なお、ルールの詳細は航空会社によって異なる場合があるので、事前にチェックしておきましょう。また国際線や海外の航空会社では取り締まりが厳しくなることもあるため、ご注意ください。