IOWNとは?NTTが取り組む構想のすごさ、5G/6Gとの関係などを解説
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IOWN(アイオン)は、NTTが2030年に実現を目指す快適なスマートな社会構想です。最先端の光技術を導入し、圧倒的な低消費電力、超大容量、超低遅延などの実現が目指されます。
この記事では、そんなIOWNについて、実現されることや5G・6G通信との関係などを解説します。この先の5年、10年に、情報インフラがどのように変化するか興味のある方は、ぜひ以下をお読みください。
IOWN(アイオン)とは
IOWN(アイオン)とは、NTTが2030年の実現を目指す次世代ネットワーク・情報処理基盤の構想。「Innovative Optical and Wireless Network(革新的な光学のワイヤレスネットワーク)」の略称です。
IOWNは、「オールフォトニクス・ネットワーク(APN)」、「デジタルツインコンピューティング(DTC)」、「コグニティブ・ファウンデーション(CF)」という3つの主要技術要素で構成されます。なかでも中心的なAPNは、情報処理基盤の技術をフォトニクス(光)ベースに転換することで、電力効率や伝送容量、速度などの圧倒的な向上を実現するものです。
IOWN構想には、NTTのほか、インテル コーポレーションやソニー株式会社をはじめ、多数の企業が参加、協力しています。
先端的な光技術によるスマートな社会の構想
IOWN構想を簡単にいえば、最先端の光技術を駆使して快適でスマートな社会を実現しようとする計画です。NTTはIOWN構想を「次々と現れるテクノロジーを『意識』しなくてもいい世界」とも表現しています。
例えば、電力効率や伝送速度が今より格段に向上すれば、スマホの充電やデバイスのアップデート時間を「意識しなくていい」世界になります。またAIによって最適なネットワークが自動で選択されるようになれば、もはや5Gや6G、Wi-Fiなどの方式の違いを気にする必要もなくなるかもしれません。IOWN構想が目指すのはそうした快適な世界観です。
IOWN構想によって実現される超省電力化や超高速化などは、医療、金融、教育、交通、エネルギーなど、私たちの生活に総合的な恩恵をもたらします。
IOWNによって実現されること
IOWNによって実現されることは主に以下の3点です。
電力効率100倍
ネットワークから端末まで、あらゆる領域に光技術が導入されることで、電力効率100倍という圧倒的な低消費電力が実現されます。例えば、スマホのバッテリーも超低消費電力となり、もはや充電の減りなど気にならない世界になるかもしれません。
また超低消費電力の機器は、持っているだけでカーボンニュートラルに貢献することになります。ひいては、IOWN構想が完全に実現すれば、社会全体でカーボンニュートラルを後押しできるということになります。
データ伝送容量125倍
最新の光ファイバを伝送システムやデバイス技術に導入し、データ伝送容量を125倍にすることが目指されます。1秒間に1,000テラbpsという現在の5Gとは比べ物にならないほどの高速大容量化が実現される予定です。
伝送容量が格段に向上することで、大容量データのダウンロードも超高速で完了させられます。オンラインゲームの購入やアップデートの作業も一瞬で終わるでしょう。
遅延200分の1
情報を圧縮せずに転送する新技術などにより、ネットワークや通信の遅延を200分の1まで短縮することが目指されます。
圧倒的な低遅延が実現することで、例えば、Web会議などリモート通信の快適性が格段に向上します。またデバイスによる遠隔操作の精度も大幅に上がり、自宅にいながらラジコン感覚で車を運転して送迎ができるようになるかもしれません。
IOWNを構成する3つの主要技術分野
IOWNは、以下3つの主要技術分野によって構成されています。
オールフォトニクス・ネットワーク
オールフォトニクス・ネットワーク(APN: All-Photonics Network)とは、ネットワークからデバイスまで、すべてにフォトニクス(光)ベースの技術を適用する試み。フォトニクスへの転換により、従来のエレクトロニクス(電子)技術ではなし得ない「圧倒的な低消費電力、高品質・大容量、低遅延の伝送」を実現する取り組みです。NTTはAPNの本質を「情報処理基盤のポテンシャルの大幅な向上」と表現しています。
オールフォトニクス・ネットワークでは、「低消費電力、高品質・大容量、低遅延の伝送」について、以下3つの目標性能が設定されています。
目標性能 | 導入が検討されている技術 | |
低消費電力 | 「電力効率を100倍に」 | ネットワークから端末まで、できるだけ光のままで伝送する技術、光電融合素子という新デバイス |
高品質・大容量 | 「伝送容量を125倍に」 | マルチコアファイバなどの新しい光ファイバを用いた大容量光伝送システム・デバイス技術 |
低遅延の伝送 | 「エンド・ツー・エンド遅延を200分の1に」 | 情報を圧縮することなく伝送する新技術など |
オールフォトニクス実現に必要な「光電融合技術」
オールフォニックス・ネットワーク実現のための要として導入が目指されているのが、光と電子を融合した新しいチップ「光電融合技術」です。配線の発熱によって性能が落ちてしまう従来の電子技術を活用したチップに光通信技術を導入し、省電力化と高速演算を可能にする取り組みです。
具体的には、チップ外部との接続に光ファイバやシリフォトチップ、アナログICなど、チップ間・チップ内のコア間に光配線を導入。チップ内外の3段階に光技術を導入することで、超低消費電力化と超高速伝送が実現されます。
なお、こうした光技術の扱いは、本来とても難しいものです。しかし、現在はフォトニック結晶という小構造に光を閉じ込める技術が発展したため、技術応用が現実的になっています。
デジタルツインコンピューティング
デジタルツインコンピューティング(DTC: Digital Twin Computing)とは、サイバー空間上に現実世界にそっくりなものを構築するデジタルツインを高次元に発展させる構想のこと。NTTが提唱する「サービス、アプリケーションの新しい世界」観です。
従来、デジタルツインは、自動車やロボットなどをサイバー空間上にデジタル表現し、分析・予測などを行う形で活用されてきました。対して、デジタルツインコンピューティングでは、ヒトを含めた社会全体を高精度に再現し、従来ではできなかった総合的な演算、未来の予測を実現可能にします。
具体的には「都市におけるヒトと自動車」など、物質的な演算にとどまらない、よりリアルに近い複雑で高次元なシミュレーションの実現が期待されます。
ヒトの内面のデジタル表現にも挑戦
デジタルツインコンピューティングでは、物質的な再現にとどまらず、ヒトの内面、例えば意識や思考なども含めて表現することが目指されます。外面だけでなくヒトの内面も考慮することで、ヒトの行動やコミュニケーションなどの社会的側面がよりリアルに表現できるという発想です。
デジタルツインのヒトにも内面を与えることで、サイバー空間の中で各人が個性的に振る舞うようになります。これにより、従来は無個性な統計データに過ぎなかった仮想社会に個々人の特徴に基づく多様性が生まれ、より高度な相互作用を実現可能です。そうしたデジタルツインコンピューティングでは、よりリアルなシミュレーションが可能になるほか、実世界の制約を超えた活用も期待されます。
コグニティブ・ファウンデーション
コグニティブ・ファウンデーション(CF: Cognitive Foundation)とは、あらゆるICTリソースを最適に制御、調和させ、必要な情報をネットワーク内に流通させる機能のこと。「すべてのICTリソースの最適な調和」と表現されます。NTTが掲げる「次々と現れるテクノロジーを『意識しなくてもいい世界』」の根幹を担う仕組みといえるでしょう。
コグニティブ・ファウンデーション実現に向けた要となる技術が、クラウドからエッジコンピューター、ネットワーク、端末まで、あらゆるICTリソースを一元的に管理できるマルチオーケストレータ。マルチオーケストレータは「オーケストレーション機能群」「マネジメント機能群」「インテリジェント機能群」という3つの機能群で構成されます。
無線接続を最適化する「Cradio(クレイディオ)」
コグニティブ・ファウンデーションには、AIが各状況下で最適な無線環境を自動的に提供する「Cradio(クレイディオ)」と呼ばれる技術も導入される予定です。現在、従来の4G/LTEに5G、Local 5G、Wi-Fi、WiMAX、衛星通信など、無線接続の方式が複雑化し、ユーザーを混乱させる事態となっています。
無線制御技術のCradioが導入されれば、自動で無線接続が最適化されるため、ユーザー側では方式の種類や違い、使い方などを意識する必要がなくなります。これこそまさしくIOWNの目指す「次々と現れるテクノロジーを『意識しなくてもいい世界』」です。
IOWNと5Gの違い
IOWN構想で実現が目指される通信のスペックは、5G通信とは比べ物にならないほど優れたものです。5G通信は「高速・大容量」「低遅延」を売りにした革新的な通信技術として登場しましたが、IOWNでは5Gの遥か上をいく「超高速・超大容量」「超低遅延」が実現されます。
IOWNは6G時代の基盤となる
NTTドコモは2030年ごろの実用化を目指し、6G通信の研究開発を進めています。2030年といえば、IOWN構想の実現予定時期と重なります。
6G通信が目指す要求条件として挙げられているのが「超高速・大容量通信」や「通信の遅延低下」「消費電力のコスト低減」など。こうした6G通信の計画は明らかにIOWN構想で実現が目指される光電融合技術などを前提としています。6G通信が目標とする「100倍以上の超大容量」などは最先端の光技術を駆使しなければ実現できません。
IOWN構想は2030年代に到来する6G時代を支えるインフラ基盤としても実現が期待されます。
6Gも可能にするIWON構想の実現に期待!
IOWN構想により、超低消費電力・超大容量・超遅延が実現されようとしています。6G通信の実用化をはじめ、私たちが日常生活で受ける恩恵は広範囲に及ぶでしょう。
IOWN構想は2024年に仕様確定、そして2030年に実現が目指されています。NTTが掲げるスマートな社会の実現を期待しながら、今後の動向に注目しましょう。