生成AIとは?仕組みや種類、活用事例、問題点などを紹介

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ChatGPTをはじめ、生成AI (ジェネレイティブAI)は社会に広く普及しつつあります。今後、生成AI はさらに私たちの日常生活やビジネスに深く浸透していき、生成AIなしでは生活を考えられない時代がやってくるかもしれません。

この記事では、生成AIの概要について、なるべく簡単にわかりやすく、なおかつ網羅的に解説します。来たる生成AI全盛の時代に備えて、今から知識を身に付け、リテラシーを高めておきましょう。

 

Contents
  1. 生成AIとは
  2. 生成AIが注目されるようになった背景
  3. 生成AIの主な種類とサービス
  4. 生成AIに使われる生成モデル
  5. 生成AI活用のメリット
  6. 生成AI活用のデメリット・問題点
  7. 生成AIが苦手なこと・できないこと
  8. 生成AIのビジネス活用事例
  9. 生成AIの今後・将来性
  10. 生成AIの今後の動向に注目!活用してみるのもおすすめ

生成AIとは

生成AIとは、自ら新規のデータを生み出せる人工知能のこと。「ジェネレイティブAI」「生成系AI」とも呼ばれます。

例えば、ChatGPTは入力内容に応じてまるで人間が書いたような文章を、Stable Diffusionはリアルな写真やイラストを瞬時に生成できます。それら生成物は(学習に用いた類似物こそあれど、)それまでこの世に存在しなかったものであり、そうした創造性こそ生成AIの本質です。

また新しい創造のために学習できることも生成AIの特徴として挙げられます。ChatGPTでも、追加のデータを与えて再学習させることで、文章生成の精度を向上させることが可能です。その学習は単なるパターン認識にとどまらず、生成AIの創造性、クリエイティビティへと昇華されます。

生成AIが生成できるもの

生成AIが生成できるものは、文章やキャッチコピー、資料、写真、イラスト、動画、楽曲、音声、プログラムコードなど多岐に渡ります。

生成AIにはいくつか分類がありますが、なかでも「文章生成AI」「画像生成AI」「音声生成AI」「動画生成AI」の4種類が有名です。プログラミング言語のソースコードを出力できる「コード生成AI」も活用が進んでいます。

 

生成AIの仕組み

AI Deep Learning

生成AIは、大量の学習データを分析することで「0から1を生み出す」創造性を獲得します。データ分析に用いられるのが「ディープラーニング(深層学習)」という仕組みです。

ディープラーニングとは、人間の脳を模倣したニューラル ネットワークに基づく機械学習のモデル。例から学ぶ人間の学習パターンを人工知能でも実現するための手法です。

つまり生成AIも、人間がお手本を見て文章やイラストを勉強するように、各ジャンルでの制作方法を学習していきます。生成AIの学習は人間のそれよりはるかに膨大であることから、ときに人智を超えた能力を発揮します。

 

生成AIと従来型AIの違い

生成AIと従来のAIの違いは、「0から1を生み出す」創造力にあります。

従来型のAIは、データの整理や分類に終始してきました。そのため、決まった作業の自動化や検索などが従来のAIのもっぱらの仕事でした。

これに対して生成AIは、既存のデータとは異なる、全く新しいものを出力できます。また従来のAIはExcelのような構造化データセットで学習させるのに対し、生成AIの学習にはフォーマットがない非構造化データを用います。

 

・生成AIと従来型AIの違い

生成AI 従来型AI
能力 生成(創造) 自動化、検索、予測
学習 パターン、関係性 情報の整理、分類
学習データ 非構造化データ 構造化データ

 

生成AIが注目されるようになった背景

生成AIが注目されるようになった理由は、1つに生成AIの技術が進歩したことです。

文章生成や画像生成の精度、スピードが共に向上したことで、生成AIは人々を驚かせ、「使ってみたい」と思わせるほどになりました。また生成AIを活用できるアプリケーションの開発が進み、誰でも手軽に生成AIを使える状況になったことも大きいでしょう。

生成AIがそのように社会に受け入れられた背景には、生産性の向上への意識があります。働き方改革や少子高齢化による人手不足などにより、限られた時間・人員でより生産的に仕事をこなさなければならないという意識が高まっています。そうした観点では生成AIの持つ圧倒的な生産の効率性が魅力的なのです。

 

生成AIの主な種類とサービス

ChatGPT

生成AIには、主に以下のような種類があります。

 

文章生成AI|ChatGPT, Geminiなど

OpenAI Introducing ChatGPT Plus

文章生成AIとは、文章を自動的に生成する人工知能の技術です。質問や要望といった形で入力したテキストデータを分析オープンし、それに応える形で人が書いたような文章を生成します。

文章の形式は、記事やSNS、ニュース、小説、エッセイ、詩などさまざまです。深層学習及び自然言語処理技術の向上により、文章訂正の質問は格段に向上しています。

主な文章生成AIサービスは、ChatGPT(OpenAI)Gemini(Google)Catchy(デジタルレシピ)などです。

 

画像生成AI|Stable Diffusion, DALL・E3など

Midjourney

画像生成AIとは、入力したテキストやイメージをもとに自動的に画像を生成するサービスです。例えば、「座っている犬」と入力すれば、犬が座っている写真が瞬時に出力されます。テキストを入力し、犬の犬種や背景、その他様子などを指定することも可能です。

画像生成AIが生成できるのは、リアルな実写写真、イラスト、アニメ・漫画、3Dモデルなど多種多様。無料のアプリも多く、簡単に精度の高い画像が手に入るため、人気が高まりつつあります。

主な画像生成AIのサービスは、Stable Diffusion(Stability AI)DALL・E3(OpenAI)Midjourney(Midjourney)などです。

 

音声生成AI|Text-to-Speech AI, ReadSpeakerなど

VOICE RECOGNITION

音声生成AIとは、自然な音声による読み上げや、特定音声の模倣などに対応した技術です。音声の読み上げ、音声合成、音声認識の3つの機能を持ちます。

例えば、テキストの読み上げでは、学習教材や各種ナビゲーション、視覚障害者への案内などに便利です。複数言語に対応しており、外国人とのコミュニケーションにも利用できます。

また音声合成では、声優やナレーターなどの声色を学習させ、その声そっくりに出力が可能です。従来の機械的な音声でなく、人間らしい自然な声が出せるので、さまざまな場面に活用できます。

主な音声生成AIのサービスは、Text-to-Speech AI(Google)ReadSpeaker(HOYA)VOICEVOX(ヒロシバ)など。

 

動画生成AI|Gen-2, Soraなど

AI動画制作イメージ

動画生成AIとは、画像やテキストなどの指示から動画を自動生成できるシステムのこと。例えば、「1枚の画像から5秒の動画を作る」など、静止画を動画化するのに使えます。

また既存の動画を変換、改良することも可能です。他の生成AIを組み合わせ、字幕や音声、翻訳なども自動生成できるサービスがあり、編集作業の合理化に役立ちます。

従来、動画の再生ツールは開発が難しいとされていましたが、Gen-2(Runway)の登場皮切りに、優良なサービスが続々と発表されています。Sora(OpenAI)Dream Machine(Luma Labs)などもおすすめです。

 

コード生成AI|GitHub Copilot, Codeiumnなど

GitHub

コード生成AIとは、特定のプログラミング言語によるソースコードを自動で出力できる技術。テキストでの要件の指示をもとに、適切かつ実行可能なコードを生成してくれます。

コード生成AIは、次に入力すべきコードを提示したり、要望に沿ったコードを一から自動生成したりしてエンジニアの業務を助けます。バグの可能性を検出し、修正案を提示してくれる機能も便利です。コード生成AIにより、タイピングや検討、トラブルシューティングなどの時間が大幅に削減され、プログラミング作業の合理化につながります。

主なコード生成AIのサービスは、GitHub Copilot(GitHub)Codeium(Codeium)Replit GhostWriter(Replit)などです。

生成AIに使われる生成モデル

生成AIには以下のような生成モデルが用いられています。

 

GPT

GPTは、米人工知能研究所のOpenAIが開発した自然言語処理のモデル。ChatGPTに使われており、人間が作成したような高度な文章を生成できるのが特徴です。

 

GPT-3

GPT-3は、2020年に発表されたGDPの第3世代。自己回帰型の自然言語処理モデル。約45テラバイトもの膨大なテキストデータを学習させることで、ある単語の次に続く単語を高度に予測できる能力を習得。命令として何らかのテキストを入力すると、その次に続く自然な文章を生成する能力を得ました。

GPT-3が生成するテキストは、人間の執筆物と見分けがつかないほど精度が高く、ニューヨーク・タイムズ紙は「人間と同等の流暢さで独自の散文を書ける」と評価しています。

 

GPT-4

GPT-4は、2023年3月に公開された第4世代で、人間と同等の文章を生成できるGPT-3はるかにしのぐ創造性を有します。

GPT-4は、第3世代以前より細かい指示にも対応できます。例えば、「アルファベットAからZまでの単語を順番に使って、単語を重複させずに物語のあらすじを説明する」といった難解な指示も瞬時に対応可能です。また25,000語を超えるテキストを処理でき、長文のコンテンツや連続する会話のプロットなども自由自在に生成できます。

またGPT-4の自然言語処理能力は、人間のエリートたちに匹敵します。事実、GPT-4は司法試験や大学入試テスト、医師試験などにおいて、上位の成績、合格点を大きく上回るスコアを記録しました。

その他、GPT-4は人間の言語指示から、直接プログラミングのソースコードを出力できます。その制度は、JavaScriptを用い、「テトリス」を60秒、「パックマン」を90秒で完全に作成できるほどです。

GPT-4o

GPT-4oは、2024年5月13日に発表された、テキスト、画像、音声の入出力に対応したマルチモーダルなGPTです。マルチタスク言語理解ベンチマーク(MMLU)でGPT-4よりも高いスコアを記録しました。また「最短232ミリ秒、平均320ミリ秒」という驚異的な応答速度を誇り、音声入力に対して人間に近い応答時間で対応できます。ラグがほとんどなく、まるで人間と話すような感覚でAIと会話することが可能です。

技術的な仕組みとして、従来のGPT-3.5やGPT-4では、テキスト、画像、音声の処理をそれぞれ異なるモデルが分担していました。しかし、GPT-4oでは全ての入出力を単一のニューラルネットワークが処理します。これにより、応答速度の大幅な向上が実現されています。開発元のOpenAIはGPT-4oについて「リアルタイムで音声、画像、テキストを横断的に推論できる新しいフラッグシップモデル」と表現しています。

GPT-4oは、全てのモダリティを組み合わせた初めてのモデルであり、その可能性は未知数です。できることや限界などについてはまだまだ未解明なところも多く、今後の動向が注目されます。

 

VAE

VAE(変分オートエンコーダー)画像生成AIに使われるニューラルネットワークを用いた生成モデルです。元の画像データから特徴を抽出し、似たような新しい画像データを出力できます。

そのため、VAEを使えば、特定の作家のイラストを膨大に学習させて、その人の画風でイラストを大量生産することも可能です。そのほか、VAEの特徴を認識する能力は、人間の顔認証にも応用されます。

 

GAN

GAN(敵対的生成ネットワーク)は、画像生成AIに用いられるVAEとは仕組みの異なる生成モデルです。「ジェネレーター」と「ディスクリミネーター」、2つのネットワークを対立させ、信頼性の高い画像を生成します。

GANでは、ジェネレーターが出力するデータを、ディスクリミネーターが学習データセットに照らして「本物」か「偽物」かを判断します。この敵対的な学習過程を、ディスクリミネーターに真偽の見分けがつかなくなるほど繰り返すことで、精度の高いデータが生成されるという仕組みです。

GANは、画像生成だけでなく、テキスト生成や音声再生ほか、あらゆるデータ型に汎用的に利用できます。

 

拡散モデル

拡散モデルは、Stable DiffusionやDALL-E3などの画像生成AIに用いられる定番の生成モデルです。GANを派生、発展させたモデルで、より高精度な画像を生成するのに用いられます。

拡散モデルでは、ノイズ付きの画像からノイズを取り除き、元の画像を復元するという学習を繰り返すことで画像生成の精度を引き上げます。

 

Transformer

Transformerは、2017年にGoogleが発表した論文に登場した強力かつ進歩的な生成モデル。ChatGPT、Copilot、BERTほか、主要な生成AIツールのベースとなるモデルです。

Transformerでは、複数の階層で学習を行う従来のパラダイムを転換。学習にAttention層のみを使うことで自然言語処理のトレーニングを高速化、高度化しました。

生成AI活用のメリット

生成AIの活用によって得られるメリットは以下の通りです。

 

業務効率化・生産性向上

生成AIは文章作成、画像編集、動画編集、音声作成、プログラミングなど幅広い用途に応用できます。生成AIに単純作業をはじめとする諸業務を代替すれば、大幅な業務効率化が可能です。

例えば、動画編集の場合、字幕をつける作業を生成AIに任せるだけでも、編集者の負担が大きく軽減されます。またプログラミングにおいても、ソースコードを生成AIから得ることで、タイピングほか諸々の負担を削減可能です。

また生成AIに単純作業を委ねることで、人間はコア業務に注力できるようになり、生産性の向上にもつながります。また昨今は生成AIのほうが人間よりも優れた能力を発揮する場面もしばしば。そのため、生成AIの導入により、成果物の精度が向上したり、ミスが減ったりして、生産性が向上する可能性も考えられます。

 

人手不足の解消

生成AIの導入による業務効率化は、人手不足の問題を解消する手段としてもおすすめです。生成AIができる仕事は全て生成AIに委ねることで工数を大幅に削減でき、少ない人的リソースでも仕事が回るようになります。

また少ない人員での制作が可能になることで、個人や小規模の会社でも大きな発展を遂げられる可能性があります。従来はチームで行うことが必須であった、例えば、映画制作やアプリケーションの開発なども、生成AIを使えば極論1人でも可能になるかもしれません。

生成AIを活用することで、湧き上がるアイデアの多くを形にし、大成功を収めるクリエイターが出てくる可能性もあります。

 

コスト削減にもつながる

生成AIによる業務の代替は、人件費や外注費などのコスト削減にも有効です。例えば、生成AIは多くの作業を高速かつ正確に処理できるため、単純作業にかかる人件費の多くが不要になるかもしれません。

また生成AIを活用すれば、画像や音声、文章などの作成を内製化できる可能性があります。そのため、クリエイターやナレーター、ライターなどへの外注費用も最低限に抑えることが可能です。

そのほか、生成AIによって人的リソースを補うことで新規雇用が抑えられれば、採用や教育にかかるコストも抑えられます。

 

新しいアイデアを創造できる

生成AIは、テキストや画像、動画音声などの新規データを、半ば無尽蔵に生み出せます。それらはまさしく新しい価値であり、事業や創作にとっての刺激となるでしょう。

生成AIが出力したテキストや画像などを見て、人間が新しいアイデアを思いつくことも十分に考えられます。生成は無料で使えるツールも多いため、新しい空気を取り入れる意味でも、試しに使ってみると良いでしょう。

 

顧客満足度の向上につながる

生成AIの導入はさまざまな点で顧客満足度の向上につながる可能性もあります。

例えば、文章生成AIによるチャットボットをカスタマーサポートに導入すれば、24時間の対応が可能です。顧客からの問い合わせに即座に応答できるようになり、利便性の向上につながります。

また生成AIに単純作業を委ねることで、人間が顧客対応にたくさん時間を当てられるようになります。そのため、従来よりも顧客と密な対話ができたり、市場調査に時間をかけられたりして、商材・サービスの品質向上が実現される可能性もあるでしょう。

 

生成AI活用のデメリット・問題点

一方、生成AI活用は以下のようなデメリット・問題点も指摘されているので注意しましょう。

 

著作権など知的財産権を侵害する恐れ

生成AIの生成物が、既存の作品等と類似している場合、著作権や商標権などの知的財産権の侵害に当たる可能性があります。

例えば、著作権の侵害にあたる可能性があるのは、文章生成AIが作成した小説やエッセイ、詩などがすでにある作品の文言、内容と似通っていた場合です。また生成AIが作成したロゴやキャッチコピーなどが、類似の登録商標を侵害する可能性もあります。

知的財産権を侵害すると、権利者から賠償請求される恐れがあるほか、会社やクリエイターの信用を著しく下げることにもなりかねません。

ハルシネーション(フェイク情報)に気づきにくい

生成AIが事実に基づかない情報をもとにデータを出力してしまうことをハルシネーションといいます。言い換えれば、テキストや音声などのデータにフェイク情報が含まれてしまう現象です。

生成AIを頻繁に活用する場合、すべてのハルシネーションを正確に見つけることは困難です。例えば、長文の中の一文節だけが誤情報だった場合、よほど注意深く見ていない限り、見逃してしまうでしょう。

そうしたハルネーションを含むフェイクコンテンツを作ってしまうと、顧客や社会全体に不利益を与える可能性があります。

 

情報漏えいのリスクがある

生成AIに対して機密情報を入力すると、それらを学習データとして利用され、生成物を通じて情報が漏洩してしまう恐れもあります。

例えば、チャットボットのAIアシスタントが、第三者の問い合わせに対して秘密情報を出力してしまうといったケースが考えられます。機密情報とは、顧客や従業員の個人情報、企業情報、製品の情報、研究データなどです。

そのため、生成AIを活用する際は、個人情報や機密情報を入力しないような運用管理、仕組み作りが必要になります。

 

価値が没個性化してしまうリスク

企業やクリエイターがこぞって同じような生成AIを導入し、同じように生成AIを活用すると、創造される価値観は没個性的なものになってしまうかもしれません。企業にとっては他社との差別化が難しく、商材・サービスの開発がマンネリ化する恐れもあるでしょう。

新規性のある価値観を生み出すためには、生成AIをどの程度活用するのか慎重な判断が必要になります。

 

思考プロセスがわからない

生成AIAIは、膨大な学習データを与えるだけでもっともらしい答えを出力してくれます。しかし、その結果がどのような思考プロセスで、生成プロセスで出力されたものなのかを人間が理解するのは困難です。AIはあくまでAIの論理で、AIの経験則でデータを生成します。

AIの思考プロセスがブラックボックスでも、現実には困らないことのほうが多いかもしれません。しかし、そのプロセスに重大な欠陥があった場合、重要な局面で思わぬ損失をもたらす恐れもあるのです。

実際、過去には画像認識サービスが黒人女性をゴリラと判定し、サービスが一時停止に追い込まれた事例もあります。この事例を踏まえれば、例えば、文章生成AIが顧客に対して悪態をつくといった可能性も考えられます。

 

意図通りのコンテンツを生成するのが難しい

生成AIに人間が望んだ通りのコンテンツを作らせるには、プロンプト(命令)のパターンを工夫したり、追加の学習をさせたりといったことが必要になります。また考えられる完璧な指示を与えたとしても、100%望んだ通りのデータが出力されるとは限りません。

そのため、生成AIを導入したものの、事業や創作に有効活用できないことも考えられます。とくに生成AIの知識やノウハウがないユーザの場合、生成物がアバウトなものになり、使い物にならないことも多いはずです。

 

人間の仕事を奪ってしまうリスクも考えられる

生成AIが進化し続けると、大半の業務を生成AIで代替できるようになり、人間の仕事がなくなってしまうリスクもあります。

従来、AIができるのは既存のパターンに立脚した単純作業だけと考えられていました。しかし、0から1を生み出す生成AIの登場により、新しい価値を創造するクリエーションの分野でも仕事が奪われる恐れが出てきました。起業家や芸術家など、将来的にもなくならないと考えられていたクリエイティブな職種も、もはや安泰ではなくなったのです。

生成AIが今後どんどん仕事を奪っていくと考えると、人間は雇用や収入を確保するために方法を今のうちから考えなければなりません。

 

生成AIが苦手なこと・できないこと

生成AIは確かに優れた能力を持っていますが、決して万能ではありません。以下のように生成AIが苦手なこと・できないこともあります。

 

感情の理解

生成AIが人間のように感情を理解することは難しいと言われています。

例えば、プロンプトを与える人間に何らかの個人的思惑や含みがあったとしても、生成はそれを読み取らないでしょう。生成AIが理解するのはあくまで言葉通りの意味であり、人間のように言葉の裏を読もうとはしません。

生成AIはあくまで膨大な学習データからパターンを抽出し、行動するに過ぎません。しかし、生成AIは過去の作品なども模倣してデータを出力するため、生成されたものが結果として感情的に見える可能性はあります。

 

主観や直感に基づく表現

生成AIは、人間からのプロンプト(命令)に基づき、文章やイラスト、音声などを生成します。命令がない限り、(少なくとも現在は)生成AI自身が思い立って何らかの作品を作る事はありません。

人間は思想や感情に任せて文章を書いたり、何らかのインスピレーションがあって絵を描いたりします。生成AIがそのように主観的・直感的に行動することはありません。

その意味で、生成AIは新規のデータを出力するとはいえど、それは真の意味で創造とはいえないでしょう。生成AIの創造は、あくまで過去のデータに基づくパターンの組み合わせ、組み換えでしかありません

 

合理的でない判断

生成AIには感情がないため、合理的でない判断はしないと考えられます。

例えば、5人の作業員と1人の作業員の命を天秤にかける思考実験「トロッコ」問題を前に、人間は判断を迷います。しかし、生成AIなら、合理性に基づいて迷わず5人を助けるかもしれません。

 

倫理的・道徳的な判断

合理的でない判断が難しいという生成AIの欠点は、倫理的・道徳的な意思決定ができないという問題にも直結します。

コンプライアンス意識が超重要視される現代で、倫理や道徳を欠いた判断は御法度です。そのため、いくら生成AIがもたらすデータがもっともらしいとしても、重要な局面でそれを利用するのはやはり難しいかもしれません。

生成AIの「非倫理的・非道徳的プロセス」が、意図せぬ差別や人権の侵害を生む可能性もあるからです。

生成AIのビジネス活用事例

以下では、生成がどのようにビジネスに活用されているのか、具体的な事例をいくつか紹介します。

 

株式会社ベネッセホールディングス|社内外にAIチャットを活用

進研ゼミなどを形するベネッセホールディングスは、社内外に文章生成AIを積極的に活用しています。

例えば、2023年4月には社内AIチャット「Benesseチャット(Bennese GPT)」を導入。社員が生成AIを自由に使える環境を整備しました。

また2023年7月には対外的に小学生向けの「自由研究お助けAI」をリリース。自由研究お助けAIは、小学生がキャラクターとの対応を通じて考える力や情報リテラシーを高められるコンテンツです。

 

Z会|英会話教材「AI Speaking」を提供

Z会は中学生向けの学習教材に「AI Speaking」を導入しています。AI Speakingは、生成AIとの対話を通じて英会話の練習ができる機能。タブレットなどでAIと対話し、英語のスピーキングを繰り返しアウトプットできます。

日本の英語教育ではスピーキング力が課題とされがちですが、それはスピーキングを練習する機会が足りないことが原因として挙げられます。AI Speakingのように生成AIを活用してスピーキングを練習できれば、将来的に日本人の英語力も底上げされるかもしれません。

また外国人講師とのオンライン英会話とは異なり、生成AI相手なら恥ずかしさを感じずに対話ができることもポイント。またタブレットなどのデバイスも好きな時間に練習できるため、無理なく続けやすいという魅力もあります。

生成aiパスポート テキスト&問題集
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日本コカ・コーラ|販促に生成AIを積極活用

日本コカ・コーラも、生成AIを積極的に活用する企業の1つです。例えば、2023年3月には、新「ジョージア」の発売に合わせ、写真をイラスト風に変換できる「AIイラストメーカー」をリリース。生成した画像は全国のマップにコメントとともに「ジョージアの聖地」として登録できます。これは、リリースから1年2ヶ月で145万回生成されたとのこと。

また2024年2月に期間限定でオープンした体験型店舗「LIVING MART by Coca-Cola ZERO」では、店舗内のコカ・コーラ ゼロに1万通りのプロフィール(出身や職業、好きなもの、趣味、特技など)を記載。これらのプロフィールは全てAIが生成した後、人間が目視でチェックしたとのことです。

また2024年3月には、こちらもジョージアの販促として、写真1枚から生成AIがオリジナルソングを作ってくれる「AIソングメーカー」を開始。このように日本コカ・コーラは、生成AIをプロモーションに積極的に活用しています。

 

au・KDDI|カスタマーサポートに生成AIを初めて導入

KDDIは2024年3月、国内主要企業で初めて、カスタマーサポートに生成AIを導入しました。

生成AIが取り入れられたのはLINEアカウント「auサポート」のチャットボット内。生成AIがお客様の入力内容を要約したり、追加の質問で情報収集を行ったりするとのことです。生成AIの活用によって問い合わせ内容をより迅速かつストレスフリーに解決することが目指されます。

なお、KDDIは2024年の正月に合わせてauの人気CM「三太郎シリーズ」を、画像生成AI「Stable Diffusion」でアニメ風にリメイクしたことでも話題になりました。また同時期に、AIシンガーを用いてオリジナル三太郎MVが作れる特設サイトも開設されました。

 

パナソニックコネクト株式会社|早期からChatGPTを積極活用

パナソニックコネクトは2023年2月から、生産性向上や社員のAIスキル向上などを目的として、ChatGPTがベースのAIアシスタントを活用しています。日本の大企業でとりわけ早期からChatGPTを活用した事例として注目されました。

2024年6月には、生成AI活用の実績を発表。導入から1年で業務時間が186,000時間も削減され、大幅な生産性向上につながったとのことです。また目標とされていた社員のAI活用スキル向上にも、明確な変化が見られました。当初は主に検索エンジン代わりに使われていた生成AIが、戦略策定や商品企画などにも活用されるようになったとのことです。

なお、情報漏えいや著作権侵害など、生成AIに関連した問題は、導入後の16ヶ月間で1件も発生しなかったといいます。

 

セブンイレブン|生成AIで商品企画を合理化

セブンイレブンは、商品企画に生成AIを積極的に活用しています。AIに全店舗の販売データやSNSの消費者の口コミなどを学習させ、流行やニーズを含めた商品の文章や画像を作成させているとのこと。生成AIの活用で商品企画にかかる時間を最大で10分の1まで短縮することが目指されています。

また現場マネージャー向けのAIアシスタントも導入。生成AIとのチャット通話を通じて、売り上げ分析などの課題解決ができる仕組みが構築されています。

さらに運営元のセブンアイホールディングスは、「生成AIファースト」を宣言。上記の事例のほかにも、あらゆる業務に生成AIを活用し、DXを加速させているといいます。

 

LINEヤフー|コード生成AIによる業務効率化

LINEヤフー株式会社は、全エンジニア約7000名にAIペアグラプログラマー「GitHub Copilot」を導入しています。GitHub Copilotは、AIがソースコードの提案やエラーのチェックなどをしてくれるいわゆるコード生成AIです。

テスト導入の際には、生成AIによってエンジニアのコーディング時間が1日約1〜2時間削減。アクティビティの一部でも約10〜30%の向上が見られたとのことです。

なお、LINEヤフーは、ヤフー株式会社の従業員約20,000人に対しても独自のAIアシスタントを提供。こちらはアンケート結果で、業務全体の約7%削減できたという成果が確かめられています。LINEヤフーのこうした取り組みは、生成AIの導入が業務効率化につながることを実証しています。

 

日立製作所|Generative AIセンターの創設

日立製作所は2023年5月、生成AIの社内外での利活用を推進するために「Generative AIセンター」を設立。生成AIを実際に使ってみて実践的な知見を得ようとする取り組みを始めました。

AIセンターの中でとりわけ人気のユースケースが、文章生成AIによるデータの要約。議事録の音声データをテキストで要約したり、長文のドキュメントをまとめたりといった活用が盛んにされているとのことです。

日立製作所の社員は、多くが生成AIの活用に熱心で、日々の業務に積極的にAIを取り入れ、生産性を向上させているといいます。

 

三菱UFJ銀行|MUFG版「ChatGPT」を開発

三菱UFJ銀行は、2023年11月に行員約40,000人に対して文章生成AI・ChatGPTの利用を解禁。社内文章の下書きや稟議書の作成などに活用されています。同行の試算によると、ChatGPTをはじめとする生成AIの導入によって、銀行業務の労働時間は月220,000時間以上が削減されるとのことです。

また三菱UFJファイナンシャルグループは、ChatGPTを安全に利用するためにMUFG版「ChatGPT」を開発。これはChatGPTと同等のサービスを行内限定で利用できるようにしたもの。入力したデータがOpenAI社に渡らないため、情報漏洩のリスクを気にせず銀行業務にChatGPTを活用できます。

 

メルカリ|AIアシストサービスを実装

メルカリでは2023年10月からAIアシスタント機能の「メルカリAIアシスト」が導入されています。メルカリAIアシストは、商品の出品時にも購入する商品の検索時にも利用できます。

例えば、商品の出品時には、売れやすい商品名や説明文の書き方などについてAIアシストから提案を受けることが可能。提案はチャットボットを通じてすぐに承諾でき、出品者は自身の商品ページを簡単に最適化できます。

また商品検索時には、欲しい商品のイメージを入力することで、AIアシストからおすすめ商品の返答を受けられます。

生成AIの今後・将来性

生成AIを取り巻く環境は今後どのように変化していくのか。以下ではその展望をご紹介します。

 

マルチモーダル化が進む

文章生成画像生成音声生成など、複数の領域に対応することをマルチモーダルといいます。現在は単一の領域を対象にしたサービスが多いですが、今後は生成AIサービスのマルチモーダル化が進むと考えられます。

事実、テキスト生成のChatGPTもGPT-4よりテキスト・画像の両方に対応したマルチモーダルAIになりました。マルチモーダル化によって生成AIサービスの利便性はより向上し、さらに活用・普及が進むでしょう。

 

職業や雇用の形が変化する

生成AIを業務効率化に活用する企業が増えているため、今後は職業や雇用への影響も顕著になると考えられます。

例えば、仕事内容が単純作業からクリエイティブな仕事、AIができない内容にシフトする可能性が考えられます。反対にAIができる仕事では、人々が雇用を奪われ必要が増えるかもしれません。

生成AIの進歩に合わせて人間が仕事を変えなければならないのは、ある意味で不気味な時代の到来ともいえます。

 

法規制やガイドライン策定が進む

生成AIは便利であるものの、著作権の侵害リスクや倫理的・道徳的な問題も懸念されています。そのため、今後は法律やガイドラインでの規制強化の動きも目立ってくると予想されます。

2024年3月、EUのヨーロッパ議会は、生成AIを含めたAIを包括的に規制する「AI法案」を承認しました。生成AIについては、生成AIを使用した画像や音声等について、AIで作成したことを明示する義務が課されました。

日本においては、2024年夏以降に生成AIに関する新たな法規制を導入するか検討が開始されるとのこと。現状の施策は生成AIの安全利用に関するガイドライン策定にとどまっており、今後の動向が注目されます。

 

生成AIの今後の動向に注目!活用してみるのもおすすめ

生成AIは、新しい文章や画像、動画、音声などを高いレベルで瞬時に作成できる魅力的なツールです。すでに業務効率化や生産性向上などを目的に多くの企業でも利用されています。

今後は生成AI関連サービスがさらに進化し、より一層の普及が進むでしょう。法規制や雇用への影響なども含めて、生成AIの今後に目が離せません。

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