5Gは、次世代の移動通信システムとして注目を集めています。 高速大容量通信、多数同時接続、高信頼・低遅延通信を実現し、これまでにない可能性を秘めた技術です。
自動運転、遠隔医療、VR・AR・MRなど、様々な分野での活用が期待されています。
この記事では、5Gの意味や特徴、これまでの移動通信システムの歴史、4Gとの違いについて解説します。 5Gがもたらす未来の可能性について、一緒に探っていきましょう。
5Gの注目ポイントと可能性
5Gとは？
まず、「5G」という言葉の意味について理解しておきましょう。
5Gは「第5世代移動通信システム」の略で、携帯電話などに利用される5世代目の通信技術を指します。
2015年9月、国際電気通信連合（ITU-R）が「IMTビジョン勧告」として発表したレポートで、初めて5Gのコンセプトが正式に提示されました。
このレポートには、通信速度や遅延に関する重要な性能要件が記載されており、次の3つの利用シナリオも示されています。
- 高速かつ大容量の通信（eMBB）
- 信頼性が高く低遅延の通信（URLLC）
- 多数の機器の同時接続（mMTC）
これらのシナリオは2017年に5Gの技術的性能要件として合意され、VRや遠隔医療、自動運転など、さまざまなユースケースが提示されました。
2019年にはアメリカ、韓国、イギリスなどの国々で商用サービスが始まり、日本でも2020年春からサービスが開始されています。
5Gは、デジタルトランスフォーメーション（DX）の基盤として大きな期待が寄せられている通信技術です。
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5Gによって実現できること
5Gが普及することで、パソコンやモバイル端末だけでなく、さまざまなデバイスがネットワークに接続され、より多様な目的に利用されるようになります。以下では、5Gが実現する可能性の一例を紹介します。
1. 自動運転
5Gの特長である超高信頼性と低遅延を活かし、自動運転の普及が期待されています。
ネットワークを通じて車同士がリアルタイムで通信し、車間距離を適切に保つことで安全性が向上します。
また、ブレーキやアクセルの操作を瞬時に他の車に伝えることで、衝突を回避できる可能性もあります。自動運転車の増加に伴い、交通事故の減少が期待されています。
2. 遠隔医療
5Gの高速・大容量通信と低遅延を活用することで、遠隔医療の可能性がさらに広がります。
これにより、医師が遠隔地にいる患者を診断することが容易になり、地方における医師不足の問題も解決できるかもしれません。
さらに、リモート操作可能な医療機器を通じて、精密な診断や治療も可能になるとされています。
3. VR、AR、MR
5Gの技術を活用することで、VR（仮想現実）、AR（拡張現実）、MR（複合現実）などの新しい表現技術が進化し、エンターテインメント、教育、医療など多くの分野で応用が進んでいます。
VRは仮想空間でリアルな体験を提供し、ARは現実世界にデジタル情報を付加し、MRは現実と仮想の融合した世界を体験させます。
これらは、ゲームやエンタメだけでなく、技術開発や商品開発にも役立つと期待されています。
4. 4K・8K映像の配信
5Gの高速通信を活かして、4Kや8Kといった高画質の映像をスムーズに配信できるようになります。
これにより、離れた場所にいても、ライブやスポーツイベントをリアルタイムで楽しむことが可能になります。
5. スマートホーム
5Gにより、複数の家電や設備がネットワークに接続され、スマートフォンから操作できるスマートホームが実現します。
照明やエアコン、洗濯機などを遠隔操作できるだけでなく、IoTデバイスが連携して生活をより便利にします。
6. スマートオフィス
5Gの低遅延かつ大容量通信を活用することで、場所に縛られずにオフィスと同じ環境で仕事を進めることが可能になります。
リモートワークやビデオ会議、VR会議を通じて、効率的な働き方が実現され、オフィスの設備やエネルギー消費の削減にもつながるでしょう。
また、AIを活用した顔認証やセキュリティ強化、無人店舗の実現など、ビジネス分野での活用も進んでいます。
5Gまでの移動通信システムの歴史
移動通信とは、持ち運びが可能なデバイスを利用して行う通信を指します。
昔は、主に飛行機や船、列車などで移動中に使われる通信手段を意味していました。
しかし、1979年に日本電信電話公社（現NTT）が「自動車電話」の商用サービスを開始し、これが現代の携帯電話の原型となりました。
このサービスで用いられたのが、初期の移動通信システム「1G」です。
この後、1980年代以降、移動通信システムは約10年ごとに次の世代へと進化を遂げていきました。
以下では、その歴史と4G、5Gの違いについて詳しく見ていきます。
1Gから3Gの進展
最初に、1Gから3Gにかけての通信システムの進化を解説します。
「1G」アナログ携帯電話の時代
1980年代に登場した1Gは、アナログ方式を使用しており、音声信号を電波に変換して送信する仕組みでした。
1985年には、肩にかけて持ち運ぶ「ショルダーホン」が市場に登場し、1987年には現在の携帯電話の原型とも言える「携帯電話」が発売されました。
この時代の1Gシステムは、音声通話のみに特化しており、通信の安定性や範囲に課題がありました。
そのため、デジタル通信技術の開発が急務となっていました。
「2G」メールとインターネットの普及
1990年代に入ると、デジタル通信が普及し、2Gの時代が幕を開けました。
これにより、データ通信が可能になり、メールのやり取りやインターネット接続が身近なものとなります。
NTTドコモが1999年に提供を開始した「iモード」は、ユーザーが着信メロディや待ち受け画面をダウンロードしたり、モバイルバンキングや地図検索サービスを利用できる画期的なプラットフォームでした。
また、KDDI（当時のDDIセルラーグループ）が提供した「EZweb」や、ソフトバンクの前身であるJ-フォンの「J-スカイ」といったサービスも相次いで登場し、モバイル市場の拡大に貢献しました。
この時期になると、データ通信の需要が急増し、より高速な通信技術への期待が高まります。
「3G」世界基準となった高速通信
2000年代になると、3Gが普及し始め、通信速度は2Gの2.4kbps〜28.8kbpsから、384kbps〜14Mbpsへと劇的に改善されました。
これにより、より大容量のデータをやり取りできるようになり、音楽のダウンロードなど新たなコンテンツサービスが急速に広まりました。
3Gは、初めて国際的な標準規格に基づく通信システムとなり、日本の携帯電話が海外でも利用できるようになったのもこの時期です。
さらに、2008年にソフトバンクが「iPhone 3G」を発売したことで、モバイルインターネットの利用は一層身近なものとなり、高速通信に対するニーズが一段と高まることとなりました。
5Gと4Gの違い
5Gは4Gと比較すると、下記のような点が進化したといわれています。
高速大容量通信
5Gでは、容量が大きいデータを、高速で通信可能になりました。 最大通信速度は4Gでは110Mbps〜約1Gbpsでしたが、5Gは10Gbps（目標理論値）です。
2時間の映画をダウンロードする際に4Gでは5分ほど必要だったのが、5Gでは3秒程度しかかかりません。 およそ100倍のスピードで、データ通信ができるようになりました。
多数同時接続可能
5Gでは、同時にネット接続が可能なデバイス数が増加しました。
4Gでは数台程度しか接続できませんでしたが、5Gは自宅部屋内の約100個の端末をネットに接続可能です。
高信頼・低遅延通信
4Gでは、オンライン会議やオンラインゲームなどでタイムラグ（遅延）を感じている方もいるでしょう。
5Gではタイムラグを意識する必要なく通信が可能になりました。
4Gの10倍の精度でロボットなどの操作が可能なほどです。
ミリ波帯とsub6帯の2種類の周波数帯
5Gでは2つの周波数帯（ミリ波帯とsub6帯）※2が使われています。 一般的な5Gネットワークはsub6帯を使っており、より高性能なミリ波帯は対応エリアが限られている段階です。
sub6帯にしか対応していなかったり、両方の周波数帯に対応しつつも高額になっていたりする機種があるため注意しましょう。
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まとめ
5Gは、「5th Generation」の略称で、次世代の移動通信システムを指します。 1980年代から約10年ごとに進化してきた移動通信システムは、1Gのアナログ方式から、2Gのデジタル方式、3Gの国際標準化を経て、4Gの高速・大容量化へと発展してきました。
5Gは、4Gと比べて、高速大容量通信、多数同時接続、高信頼・低遅延通信が可能になります。 これにより、自動運転、遠隔医療、VR・AR・MR、4K・8K映像配信、スマートホーム、スマートオフィスなど、様々な分野で新たな可能性が広がります。
5Gは、ミリ波帯とsub6帯の2種類の周波数帯を使用しており、より高性能なミリ波帯は現在のところ限られたエリアでの提供となっています。 5G対応機種の選択の際は、対応周波数帯や価格にも注意が必要です。
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