最新のAI技術に触れる中で、テキスト生成や画像生成といった個別の機能を持つAIツールは数多く登場しています。しかし、これらのツールを使いこなすには、複数のツールを行き来したり、複雑な指示を細かく出す必要があったりすることも少なくありません。
そんな中、まるであなたの隣にいる優秀なアシスタントのように、自ら考えてタスクを遂行してくれる革新的なAIエージェントが登場しました。それが今回ご紹介する「Manus(マナス)」です。
「一つの指示で、情報収集から最終的な成果物の提出までをAIに完結させたい」—そんな願いを叶えるManusは、あなたの日常やビジネスにおける作業効率を飛躍的に向上させる可能性を秘めています。本記事では、この完全自律型AIエージェント「Manus」の全貌を、その特徴、機能、料金体系、そして実際の使用感まで徹底的に解説します。
AIエージェント「Manus(マナス)」とは?
(出典:Manus)
「Manus(マナス)」は、中国のスタートアップ企業「Monica」によって開発された完全自律型の高性能AIエージェントプラットフォームです。2025年3月に正式に発表され、シンガポールに本社を置きながら、米国や日本(東京)にも積極的に進出しているグローバル企業です。
Manusの最大の特徴は、目標設定から最終的な成果物の納品までを自律的に完結できる汎用AIエージェントである点です。これは、AIが自らタスクの計画を立て、実行し、必要に応じて検証・修正を行うという、マルチエージェント連携(プランナーエージェント、実行エージェント、検証エージェント)の仕組みによって実現されています。
内部のLLM(大規模言語モデル)にはAnthropicのClaude 3.5 SonnetやファインチューニングされたArivaのKuenといったモデルが利用されており、Claude 3.7も社内でテスト中であるとされています。これにより、ウェブサイト構築やプログラミング関連のタスクに高い能力を発揮すると考えられます。
また、Manusは単なる質問応答AIではなく、ユーザーがログアウトしても作業を継続できるクラウド実行に対応しており、ウェブブラウザやExcelの操作、コードの実行といった外部ツールとの統合も進んでいます。
Manus(マナス)でできること
Manusは、非常に幅広いタスクを自動化し、コンテンツを生成できるマルチモーダルなAIエージェントです。ここでは、その主要な機能をご紹介します。
通常のチャット機能
- Web検索機能を備えており、日常的な質問への回答や情報検索を無料かつ無制限で行うことができます。
資料作成
- ビジネス向けのスライドやプレゼンテーション資料を、シンプルな指示で高品質に生成します。
- 作成された資料はウェブページ上で直接テキスト編集が可能です。
- PowerPoint、PDF、Googleスライド、Googleドライブ、OneDriveなど、多様な形式でエクスポートできます。
- セミナー資料や自己紹介資料、社内向け資料など、幅広い用途に対応します。
ウェブサイト作成
- ランディングページ(LP)やポートフォリオサイト、ウェブアプリケーションなどを簡単な指示で作成し、公開(デプロイ)まで可能です。
- 作成中に問い合わせフォームの動作テストまで自動で行うなど、高い完成度を実現します。
- ウェブページも直接編集できるため、簡単な修正であればその場で完結できます。
画像生成
- DALL-E 3やStable Diffusionなど、最新の画像生成AIモデルを統合し、最適なものを選択して画像を生成します。
- 一度の指示で複数の画像をまとめて出力できるため、効率的です。
- ドキュメントやスライド内に画像を自動で配置することも可能です。
- 著作権フリーの画像収集や、YouTube動画のサムネイル作成なども行えます。
動画生成
- Googleの最新動画生成AI「Veo 3」をサポートしており、SoraやRunwayといった他の主要な動画生成AIツールも活用します。
- テキストや画像から高品質な音声付き動画を生成できるのが特徴で、カメラワークの自動演出や様々な動画スタイルに対応します.
- 一度の指示で複数パターンの動画を一括生成できます。
- 生成された複数の動画を結合して一つのアニメーションを作成することも可能です。
- SNS素材の作成や、YouTube動画の切り抜き、コンセプト動画の制作などに活用できます。
コーディングタスク
- 革新的なアイデアを盛り込んだゲーム開発や、Webアプリケーションの作成など、複雑なプログラミングタスクに対応します。
- 作成したWebアプリは、Manusのサーバー上で公開され、URLで共有可能です。
定期自動タスク
- 毎日、毎週といったルーティン作業や繰り返し作業をスケジュールに登録し、自動で実行させることができます。
- 例えば、毎朝のニュース収集や毎週のSNS投稿、月次レポートの自動作成などに役立ちます。
情報収集・リサーチ・分析
- Webブラウジングを通じて情報を収集し、レポートやデータ分析、グラフ作成を行います。
- Googleスプレッドシートへの情報整理や、特定の条件での動画リサーチなども可能です。
- 会員制サイトへのログイン状態を保持し、ユーザーに代わってサイト内での操作(例:Amazonでの購入履歴取得、フォーム入力・送信)を実行することも可能です。
音声生成(ポッドキャスト)
- テキストをAI音声に変換し、ナレーション付きのポッドキャストやブログ記事の音声コンテンツ、瞑想ガイド音声などを生成します。
- 多言語に対応し、男性・女性の声を選択できます。
知識・記憶の蓄積
- 過去のタスクや会話、アップロードされた資料から学習し、ユーザーの好みや指示を知識として記憶・蓄積させることができます。
- 使うほどに精度と品質が向上し、自分専用のパーソナルAIとして成長させることが可能です。
Manus(マナス)のクレジットについて
Manusは、タスクの実行に「クレジット」を消費するサービスモデルを採用しています。クレジットは、Manusに依頼する際の「通貨」のようなもので、タスクの複雑さや処理時間に応じて消費量が変動します。
Manus(マナス)の料金プラン
Manusには、無料プランを含む複数の料金プランが用意されています。Manusは、タスクの実行にクレジットを消費するタイプのサービスです。
プラン名 | 料金(月額/年額契約時) | 毎日もらえるクレジット | 月間クレジット総量 | 同時実行可能タスク数 | スケジュールタスク数 |
---|---|---|---|---|---|
Free | 0円 | 300 | (制限あり) | 1 | 1 |
Basic | 16ドル | 300 | 1900 | 2 | 2 |
Plus | 33ドル | 300 | 3900 + 追加3900* | 3 | 3 |
Pro | 166ドル | 300 | 19900 + 追加19900* | 10 | 10 |
*限定オファーによる追加クレジット
機能そのものはどのプランでも利用できるものが多いですが、クレジットの付与量や同時実行できるタスク数、スケジュールタスクの件数に違いがあります。
Freeプランでできること
ManusのFreeプランでは、毎日300クレジットが付与され、基本的な機能を利用することができます。
特に、通常のチャット機能とウェブ検索機能は無料で無制限に利用できるため、情報収集や簡単な質問には十分活用できます。また、一つのタスクを同時に実行でき、一つのスケジュールタスクも設定可能です。
しかし、画像や動画生成、複雑なウェブサイト作成など、多くのクレジットを消費するタスクを頻繁に行う場合は、クレジットがすぐに不足する可能性があります。本格的にManusの自律型AIエージェントとしての能力を最大限に活用したい場合は、有料プランの検討がおすすめです.
Manus(マナス)の登録方法
Manusのアカウント登録は、Googleアカウント、Appleアカウント、またはメールアドレスを使用して行うことができます。ここでは、メールアドレスでの登録手順を詳しくご紹介します。
- 名前、メールアドレス、パスワードを入力し、登録ボタンをクリックします。
- 登録したメールアドレスに送られてくる6桁の認証コードを入力します。
- 電話番号を入力します。
- 登録した電話番号に送られてくるコードを入力します。
- 登録が完了します。
新規登録時には、プロモーションコードを利用することで、追加のクレジットを獲得できる場合があります。提供されているプロモーションコードを入力すると、初期クレジット(例:1000クレジット)に加えてさらに1000クレジット、合計2000クレジット(これに日次300クレジットが加算)が利用開始時に付与される可能性があります。
実際にManus(マナス)を使用してみたレビュー
実際にManusを様々なタスクで試した結果、その自律性と実行力には驚かされる点が多々ありました。特に「Manus使用レビュー」の情報を中心に、各機能の詳細な使用感と結果をまとめてみました。
スライド資料作成
依頼内容:
新商品のマーケティング戦略に関するプレゼン資料作成。ターゲット層、訴求ポイント、含める項目、視覚に訴えるデザインを詳細に指示。
実行時間: 約10分。
消費クレジット: 280クレジット。
結果:
9ページのスライド資料が作成されました。テキストや画像だけでなく、グラフもきれいに作成されており、資料として十分なクオリティでした。作成されたスライドは直接編集が可能で、PPTXやPDF形式で出力できるほか、GoogleスライドやGoogleドライブへの保存もできます。この柔軟性は、後からの微調整を考えると非常に便利です。
ウェブサイト作成
依頼内容:
「MiRA Hub Cafe」のウェブサイト作成。コンセプト、店舗情報、メニュー、コンセプトページ、ギャラリー、問い合わせフォームを含め、温かみのあるナチュラルなデザインで、HTML/CSS形式でZIPダウンロード可能にするよう指示。
実行時間: 10分かからず完了。
消費クレジット: 214クレジット。
結果:
きれいに作成されたウェブサイトが生成され、最終的にZIPファイルでダウンロードできました。驚くべきは、作成中に問い合わせフォームなどの動作テストまで自動で行ってくれる点です。ウェブページも直接編集モードで修正できるため、簡単なテキスト変更などであればその場で対応できます。
画像生成
依頼内容:
夏の新作Tシャツの広告用画像作成。モデル、背景、Tシャツデザイン、雰囲気、そしてオリジナルのブランドロゴ作成も指示。
実行時間: 約1分。
消費クレジット: 35クレジット。
結果:
指示に沿った画像が生成されました。プロンプトを具体的にするほど、よりイメージに近い画像が得られる印象です。YouTube動画のサムネイル画像生成も試しましたが、画像内の文字が一部途切れるといった課題が見られ、完璧な文字入り画像を生成するには調整が必要な場合もあります。しかし、背景画像のみを生成し、後からテキストを重ねるといった活用方法も有効です。
音声生成(ポッドキャスト)
依頼内容:
ポッドキャスト番組「MiRA Hub Cast」の第1回制作。台本、声(男性)、BGM(落ち着いたジャズ調)を指示。
実行時間: 約5分。
消費クレジット: 107クレジット。
結果:
機械的な発音の部分も多少あるものの、全体的にきれいに音声が生成され、著作権フリーのBGMも自動で挿入されました。ウェブサイトの長文コンテンツやニュース記事を音声化し、流し聞きすることで情報収集を行うといった新しい使い方も可能になります。
全体的に、Manusは多くのタスクにおいて高い自律性と実行力を示しましたが、一部の生成物(特に画像内の日本語テキストや動画の自動編集)では完璧ではない部分も見られました。そのため、AIが生成したものを人間が最終的にチェックし、必要に応じてブラッシュアップするプロセスは依然として重要です。
Manus(マナス)のアプリについて
(出典:Google Play)
Manusは、専用のアプリとして提供されているというよりも、ウェブブラウザを通じてアクセスするWebサービスとして利用できます。
公式サイトにアクセスし、OpenAIアカウントなどでログインすることで、PC、スマートフォン(iPhone/Android)、タブレット(iPad)など、インターネットに接続できる様々なデバイスから利用可能です。インストールやダウンロードは必須ではありません。
また、Manusの動作はクラウド上で継続されるため、ユーザーがウェブページを閉じたり、PCの電源をオフにしても、タスクはバックグラウンドで進行し、完了を待つ必要がありません。
なお、Manusに似た挙動を持つ「Open Manus」というオープンソースソフトウェアの開発も進められており、プログラミングの知識があれば、ユーザー自身のパソコン上で同様の機能を利用することも可能です。これは、Manusのサーバーにデータを送信せずに作業を行いたい場合に選択肢となりますが、本家Manusと比較すると、レポートの品質などに差がある場合があるようです。
> Google Playストア「Manus AI」ダウンロードページはこちら(Android用)
> AppStore「Manus AI」ダウンロードページはこちら(iOS用)
AIエージェントの新たな地平を拓く「Manus(マナス)」
AI技術の進化が目覚ましい中、個別の機能に特化したAIツールが溢れる一方で、「AIにどこまで任せられるのか」という問いは常に存在しました。そんな中で登場した「Manus(マナス)」は、完全自律型AIエージェントとして、その問いに対する明確な答えの一つを示しています。
Manusの大きな優位性は、その圧倒的な実行力と自律性にあります。情報収集から分析、資料作成、ウェブサイト構築、画像・動画生成、さらにはプログラミングや特定のオンラインサービスの操作まで、多岐にわたるタスクを、まるで人間のアシスタントのように自ら考えて実行します。これは、対話形式で質問に答える従来のAIとは一線を画す、「物知りな相談相手」から「実際に仕事もこなしてくれる仲間」への進化と言えるでしょう。クラウド上での非同期動作や、複数のAIモデルを最適な形で使い分けるマルチエージェントシステムにより、作業効率を飛躍的に高める可能性を秘めています。
しかし、その一方で、Manusはクレジットを消費するサービスであり、複雑なタスクほど多くのクレジットが必要となります。また、生成されるコンテンツが常に初回から完璧であるとは限らず、特に画像内の日本語テキストや、動画の自動編集など、一部の機能ではまだ改善の余地が見られます。そのため、AIが生成した成果物を人間が確認し、必要に応じて微調整を加える「人間とAIの協調」は引き続き重要です。初期段階であることによる安定性の課題や、セキュリティ・プライバシーへの懸念についても、今後の改善が期待されます。
Manusは、今後もその機能を急速にアップデートし、進化を続けると予想されます。日々の情報収集や定型業務の自動化から、クリエイティブなコンテンツ制作の支援まで、その活用範囲はまさに無限大です。まだ発展途上の部分があるとはいえ、AIが人間の働き方を変える「未来感」を強く感じさせるツールであり、今後AIを業務に取り入れていきたいと考えるすべての人にとって、試してみる価値のあるサービスと言えるでしょう。