Nostrとは?Xに代わる分散型SNSプロトコルの魅力や始め方などをわかりやすく解説

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Nostrとは、公開鍵暗号による電子署名を基本にした分散型SNSプロトコルです。Twitterの創業者ジャック・ドーシー氏らが、Xなど中央集権型SNSへのアンチテーゼとして開発を推進しています。

この記事では、そんなNostrについて、特徴やメリット、始め方などをご紹介します。新しい自由なSNSプラットフォームに興味のある方、Xをはじめ中央集権型SNSにうんざりしている方などは、ぜひ以下をご覧ください。

Nostrとは

Nostrとは、分散型SNSを実現できるプロトコル(ここでは「土台」のような意味)の一つ。リレーとクライアントの2要素で構成され、公開鍵暗号による検証を特徴とします。

Nostrは、Xほか中央集権型SNSに代わる自由な分散型SNSプラットフォームを生み出せる手段、可能性として注目されています。Twitterの創業者で元CEOのジャック・ドーシー氏が巨額の支援を行ったことも話題になりました。そのジャック・ドーシー氏が発表した「Damus(ダムス)」をはじめ、すでにNostrを用いた分散型SNSが続々登場しています。

ちなみに「Nostr」は「Notes and Other Stuff Transmitted by Relays(リレーによってやり取りされる短い投稿その他)」の略称です。日本語では「ノスター、ノストル、ノステラ」などと呼ばれます。

Nostrの構成要素

Nostrネットワークイメージ

分散型SNSプロトコルであるNostrは、以下のような要素で構成されます。これらを理解することは、Nostrのイメージをつかむ上で重要です。

クライアントとリレー

Nostrはクライアントとリレーという2つの基本要素で構成されます。

クライアントとは、リレーにデータを読み書きするためのインターフェースのこと。具体的には、SNSのサービスを利用するための モバイルアプリやウェブブラウザのことです。

一方、リレーとはクライアントが接続するサーバーのことを指します。リレーは投稿のデータを集積するデータベースのようなものと考えてもよいでしょう。

接続の冗長化(多重投稿)

Nostrのユーザーは、通常3〜20個ほどのリレーに同時接続し、すべてのリレーに対してデータの送信や購読を行います。そのため、1つ以上のリレーを共有している相手とは、投稿のやりとりが可能です。

ユーザーは複数のリレーに接続しているため、たとえそのうちのいくつかがダウンしたとしてもほとんど問題になりません。すべてのリレーがふっ飛ばない限り、気にせずSNSの投稿や閲覧を続けられます。

Nostrではこのように接続を冗長化(多重化)することで、中央サーバーに依存することなくデータが守られます。

公開鍵暗号と電子署名

Nostrには、中央集権型SNSでは当たり前の中央サーバー、アカウント、ID、パスワードがありません。存在するのはリレーとクライアント、そして秘密鍵と暗号鍵だけです。

Nostrでは、全ての投稿には秘密鍵による電子署名がなされるため、改変や改ざんができません。サーバー側は投稿に紐付く公開鍵によって、それが秘密鍵を持つ本人によるものかを検証できます。

Nostrでは、秘密鍵によって電子署名されたデータの集合が、便宜的にアカウントのようにみなされます。秘密鍵の作成は、クライアントで行います。秘密鍵には公開鍵がペアになっており、これらはいわばパスワードとIDです。

Nostrの魅力

Nostrで実現される分散型SNSには、Xなど中央集権型SNSにはない以下のような魅力があります。

アカウントが凍結されない

Nostrを用いた分散型SNSでは、権威ある管理者によってアカウントが凍結されることがありません。アカウントの削除や永久凍結を恐れることなく、気兼ねなく発信・発言できる自由さが魅力です。

Nostrでも個別のリレーでBANされる可能性はありますが、複数のリレーに接続するNostrユーザーにとってその影響はごく軽微なものです。ユーザーは数多のリレーに分散接続、分散投稿するため、サーバー側で発言を検閲することは原理的に不可能と言って良いでしょう。

障害の影響をほとんど受けない

中央サーバーに依存しないNostrでは、システム障害によって大きな不便を被ることがほとんどありません。

例えば、Xなどの中央集権型SNSでは、何らかの障害によってサービスにアクセスできなくなることが起こりえます。中央サーバーが障害に対処しない限り、ユーザーはSNSのサービスを利用できません。

その点、Nostrの分散型SNSでは、あるサーバーがダウンしたとしてもその他無数のサーバーは平常通り運転を続けます。ユーザーも普段通り複数のサーバーに同時投稿し、一つでもサーバーを共有している相手にはいつも通り投稿が届きます。

改ざんされない

Nostrにおいて、全てのデータには公開鍵暗号による電子署名が付与されるので改ざんが困難です。サーバー側はイベントに紐付く公開鍵によって、それが暗号鍵を持つユーザー本人によるものかを検証できます。

電子署名・公開鍵・暗号鍵を用いたこうした仕組みにより、Nostrでは第三者によるなりすましが防止されます。

またこうした公開鍵署名は本来サーバーの権限を制限するための仕組みです。よって、サーバー側が発言の中身を書き換えたり、勝手に広告をつけたりといったこともなされません。これも中央集権型のSNSにはない魅力です。

自由に拠点を作れる

Nostrは、誰でも自由に利用できるオープンなプロトコルです。そのため、既存の分散型SNSプラットフォームを利用するだけでなく、自ら新たに拠点を開拓することも可能です。例えば、自分だけのリレーを作って、プライベートな投稿することもできます。

クライアントやbotを新設するのも自由です。誰の許可も必要ありません。クライアントは、X・Twitterの代替を意識したマイクロブログ風のものが主流ですが、ブログや掲示板のような仕様にもできます。

XではAPIの有料化により、botアプリの多くが使えなくなりました。botでのSNS投稿を楽しみたい方は、Nostrを始めて自由に遊んでみるとよいでしょう。

投げ銭(チップ)がもらえる

Nostrには、「Zap」という投げ銭(チップ)の機能が搭載されています。通貨にはSatoshi(ビットコインの最小単位=0.00000001 BTC)が用いられ、Lightning networkを介して送金されます。

Zapを受け取る準備は、クライアントのアカウント設定にライトニングウォレットのアドレスを追加するだけ。プロフィール下に雷のアイコンとライトニングアドレスが表示され、ほかのユーザーがZapできるようになります。

良い投稿にはZapを送るのがNostrの文化。面白い投稿を考えてチップを受け取るのも一つの楽しみです。

ファンド(資金支援)のチャンスもある

現在、Nostrを用いた開発を発展させるべく、ジャック・ドーシー氏をはじめとする個人や機関が、クリエイターに積極的な出資を行なっています。

例えば、同氏がNostr開発者のfiatjaf氏に対して14BTC(約5000万円)と500万ドル(約7.5億円)を支援した話は有名です。ジャック・ドーシー氏はNostrの支援団体にも1000万ドル(約15億円)の寄付をしており、これを原資に各種の助成金が運営されています。

こうした状況から、誰でもNostr開発に意欲的に取り組み、成果物が評価されればファンドを受け取れる可能性があります。分散型SNSの開発・運用に興味のある方は、これを機会に勉強を始めてみるのもよいでしょう。

Nostrの問題点

分散型SNSプラットフォームのNostrには、以下のような問題点が指摘されています。これらはNostrが持つ自由さの代償ともいえます。

秘密鍵が漏れると対処できない

Nostrにおいて、ユーザーの本人性を証明するのは秘密鍵のみとなっています。第三者によるなりすましが防止されるのも、秘密鍵(と表裏一体の公開鍵)が検証されるからです。

そのため、万が一、秘密鍵が第三者に渡ってしまうと、アカウントの乗っ取りを止めることはできません。乗っ取られたら、その第三者と共生してアカウントを使うか、秘密鍵を捨てるかしかありません。中央集権型SNSのように簡単にパスワードをリセットできることはないので注意が必要です。

秘密鍵が漏えいしないよう、インターネット接続時のセキュリティには十分に気をつけなければなりません。また常用の秘密鍵・公開鍵は使用せず、遊ぶのには実験用の秘密鍵・公開鍵を使うのも良いでしょう。

治安維持が難しい

Nostrでは発言・発信の自由度が高い分、スパムなどの危険情報が流通しやすいという問題点もあります。

たとえ危険情報を拡散しまくる治安の悪いアカウントがあったとしても、それをネットワークから追い出すことができません。サーバー単位では検閲できても、その他の無数のサーバーでの発言・発信は止められないからです。

とはいえ、投稿の有料化など、サーバー単位での治安維持は可能なので、あらゆる場面で危険に晒されるわけではありません。今後、ネットワークの検閲体制を悪用したスパムなどが増えていくと、Nostr内は有料の安全地帯と無料の危険地帯に二分されるかもしれません。

データを削除できない

中央集権型のSNSでは、一応投稿したデータを簡単に編集・削除できます。一方、Nostrではリレー管理者に削除を要求することはできますが、実際に消してもらえる保証はありません。またデータには電子署名が施され、改変はできないので、あとから投稿を編集することも不可能です。

さらにユーザーは他人の投稿をほかのリレーに再接続できるため、一度投稿したデータは無数に拡散される可能性があります。よって、リレーに一度投稿したデータは、二度と削除できないと考えたほうがよいでしょう。

ちなみにNostrではデータの保持もリレー管理者次第であり、データが保存される期間や容量はかっちり決まっていません。そのため、一度投稿したデータがその後どれだけ存続するかも不明瞭です。

Nostrを使ってみる【おすすめクライアント】

Nostrによる分散型SNSを使ってみたい方は、以下の有名なクライアントを試してみると良いでしょう。

nostter

nostterは日本製のTwitter風Webクライアントです。簡単にアカウント作成、日本語リレーの閲覧ができるため、Nostrを体験してみたい初心者には最適でしょう。画像が添付できたり、noteのIDを出力できたりと機能性にも優れています。

またnostterでは「タイムラインをのぞいてみる」で、アカウント作成なしにリレーを閲覧することも可能です。WebアプリなのでiOS/Android/PCを問わず利用できます。

・nostterの始め方

  1. ブラウザで「https://nostter.app/」にアクセス
  2. 「タイムラインをのぞいてみる」をタップ
  3. もしくは「アカウント作成」をタップ
  4. 名称欄にハンドルネームを入力し「作成」をタップ
  5. 設定(歯車マーク)をタップ
  6. 一番下の「Show」をタップして秘密鍵をコピーしておく

Nozokimado

Nozokimadoは、いくつかの日本語リレーの投稿閲覧できるWebクライアント。名前の通り、Nostrの「のぞき窓」になっているWebサイトで、アカウント作成やログインなしに投稿が見られます。

ひとまずNostrの投稿を見てみたい場合には、Nozokimadoを見てみるとよいでしょう。検索機能や読み上げ機能なども実装されています。

・Nozokimadoの使い方

  1. https://relay-jp.nostr.wirednet.jp/index.html」などにアクセス
  2. トップページに表示される投稿を自由に閲覧する

Nostrの分散型SNSを体験してみよう!

Nostrは、Xをはじめとする中央集権型SNSからの代替先として注目されている分散型SNSプラットフォームです。企業が厳粛に管理するSNSにはない自由さがあるため、興味のある方はぜひ使ってみてください。

またNostrでは自らリレーを運営することもできるため、これを機会にアプリ開発などにチャレンジしてみるのもよいでしょう。取り組みが評価されれば、ファンド(資金支援)を受け取れるかもしれません。

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