DeepSeek(ディープシーク)とは?どこの国のAI?使い方・危険性
【この記事にはPRを含む場合があります】
2025年1月27日、週明けのニューヨーク株式市場で、AI処理に必要なGPUを作成メーカーとして人気を得ていた『NVIDIA(エヌビディア)』の株価が一時17%も下落するという、”DeepSeekショック” と呼ばれる事態が起こり、大きな話題となりました。
“DeepSeekショック” は、1週間前の1月20日に、中国の新興AI企業 DeepSeek社が、ChatGPT を運営する米OpenAI社の最新モデル『OpenAI o1』と同等の性能を持つ大規模言語モデル『DeepSeek-R1』を発表したことで、「NVIDIAのGPU需要が減るのでは?」という予測が市場を駆け巡ったことに起因します。
この記事では、いま大注目の『DeepSeek(ディープシーク)』とは何かや、使い方、危険性についてお伝えします。
「DeepSeek(ディープシーク)」とは?
(出典:DeepSeek)
『DeepSeek(ディープシーク)』とは、中国の浙江省杭州市に本社を持つAI開発企業 DeepSeek社(深度求索)、および、同社の提供するAIのことを指します。
どこの国のAI?中国発?
DeepSeek社(ディープシーク社)は、2023年に中国の浙江省杭州市で設立された、中国のAIスタートアップ企業です。
正式な社名は、”杭州深度求索人工智能基礎技術研究” と言います。
創業からわずか2年で、米国市場を大きく揺るがすほどのAI『DeepSeek-R1』を発表したことになるとは驚きですよね!
ただ、DeepSeek創業者の “梁文鋒(Liang wen feng/リャンウェンフォン)氏” は 、2015年に、中国最大手のクオンツ・ヘッジファンド(AIを使って投資を行うファンド)『High-Flyer(幻方)』を設立した人物。
同社の80億ドル(約1兆2439億円)にもおよぶ資産を使って、社内に小規模なAI研究所『Fire-Flyer』を作り、ディープラーニングの研究をはじめたのが、DeepSeekのもとになっていて、長年目指していた中国発のAIを実現した形になります。
“AIオタク”として知られる梁文鋒氏は、過去のインタビューで、AIモデルを「金儲けに使うつもりはない」という発言をしていたと報じられていて、梁氏の姿勢も、低価格でのサービス提供に至った要因の1つとも推察されています。
ディープシーク創業者である梁文鋒氏は1月20日、李強首相との会談に出席したと、国営の中国中央テレビ(CCTV)が報じた。https://t.co/h2TqcJzKrp pic.twitter.com/1SjLHSWQLg
— ロイター (@ReutersJapan) January 29, 2025
DeepSeekショックはなぜ起きた?
2025年1月27日、米国のニューヨーク株式市場で、AI処理に必要なGPUメーカー大手『NVIDIA(エヌビディア)』の株価が一時 “17%も下落する” という、”DeepSeekショック” と呼ばれる株価変動がおきました。
【きのうエヌビディアが時価総額91兆円消失、日本でも1兆円超の消失が4銘柄】#岡村友哉「DeepSeekショックなるもので、半導体に流れていた資金が別に向かうと。利上げ後の銀行株、中国春節入りのインバウンド株など。ここ1日半で時価総額をぶっ飛ばした金額の大きい銘柄と逆に増やした銘柄はこちら」… https://t.co/bAW4GdT89d pic.twitter.com/wW8RCnpuZT
— 日経CNBC (@NIKKEI_CNBC) January 28, 2025
「なぜ、DeepSeek-R1を発表したことが、NVIDIAの株価に影響したのか?」疑問に思う人もいるかもしれませんが、これには、DeepSeekが利用したNVIDIA製のGPUが関係しています。
2022年10月、米国政府は中国の企業に対して、NVIDIA製の最先端チップの輸出規制を導入しました。
そのため、DeepSeekでは、米国の企業が利用しているNVIDIA製の “生成AI” や “大規模言語モデル(LLM)” 開発向けに設計された、最先端のGPU “H100” を開発に使うことができず、中国企業向けにスペックを落とした “H800” をAIモデル開発に利用しています。
これまで「生成AI開発には、NVIDIAの最先端GPUが不可欠」とされてきた前提が崩され、「NVIDIAの最先端GPUを大量に使わなくても、生成AIが開発できるのでは?」「NVIDIAのGPUの利用率が下がるのでは?」「中国のAI企業の方がすごいのでは?」という憶測が投資家の間に広がったことから、一時、NVIDIAをはじめ米国のAI関連株が一斉に売られる展開になったのです。
ただ、そもそもDeepSeekも “NVIDIAのGPUを使用している” という事実に変わりはありません。
また、DeepSeekは “研究から商用利用まで幅広く活用できるオープンソース(MITライセンス)で公開されている” という点から、まずますAIを活用する人が増えるだろうとの見方が強まり、翌日の2025年1月28日には、DeepSeekショックは収束に向かいました。
「マーケットの過剰反応だった」という見方をする人が多いですが、それほどまでに、『DeepSeek-R1』の登場はインパクトのあるニュースだったのです。
DeepSeekの登場で変化する生成AI業界の未来
世界中に、大きな衝撃を与えた『DeepSeek』。
DeepSeekの開発費は、”約558万ドル(約8億6200万円)” と発表されています。
この金額には、人件費などは含まれず、GPUの利用料金のみを示した金額とされているので、開発費の総額はもっと多くなるのですが、米国のOpenAI社や、Claudeで知られるAnthropic社(アンソロピック社)がAIモデルを開発するのにかかる費用の “10%程度” で大規模言語モデルを開発できたということになります。
「高性能なAIモデルの開発には、高額な開発費用がかかる」という、これまでの生成AI業界での常識をDeepSeekが覆したことで、今後のAI業界の未来は大きく変わるでしょう。
また、2025年1月20日発表の最新モデル『DeepSeek-R1』は、Web版では “無料” で利用できるほか、研究や開発に利用できる “APIの利用料金” は、100万トークン当たり “入力:0.55ドル / 出力:2.19ドル” という驚異的な低価格です。
OpenAI o1の利用料金と比較すると、o1のAPI利用料金は、100万トークン当たり “入力:15ドル / 出力:60ドル” なので、DeepSeekは “桁違いの安さ” だと言えます。
今後、低価格で高性能なAIモデルを利用できるようになるので、AI技術を活用したサービス・商品の開発がさらに広がるのではと予想されています。
DeepSeekの危険性・安全性
世界を大きく変える可能性がある『DeepSeek』ですが、心配なニュースも入ってきています。
1つは、”OpenAIのデータの不正入手” です。
2025年1月28日、米ブルームバーグ通信は、”DeepSeekの関係者が、OpenAIのデータを不正に入手した可能性がある” と報道しました。
生成AI競争が世界で加速する中、米国と中国の両国間の関係性に悪影響を及ぼさないかと懸念されています。
また、利用者目線では、DeepSeekのプライバシーポリシーに、ユーザーから収集したデータを “中国にある安全なサーバに保存する” と明示されている点にも懸念する声が上がっています。
中国の法律の管理下に置かれることで、日本の個人情報保護法が適用されない可能性がある点など、SNSでは、不安感を吐露する人が多いです。
< DeepSeekの利用で中国のサーバーに保管されるとされるデータの例 >
● 個人情報(生年月日、メールアドレス、電話番号、パスワード)
● 入力された “テキスト” や “音声プロンプト”
● アップロードされた “ファイル”
● IPアドレス、端末モデル、言語設定
● Cookieで収集された行動データ など。
中国製生成AIのDeepSeekですが、入力した情報や利用履歴などのデータは中国国内のサーバーに保管されて中国の法律の管理下になるため、日本の個人情報保護法における外国にある第三者への提供に該当しそうなので
企業がビジネスに活用するのは無理そうhttps://t.co/lCh2gRZrGn— 弐億貯男 (@2okutameo) January 27, 2025
実際に、イタリアでは、DeepSeekのアプリが配信停止になるなど、利用規制を行う国や、調査に乗り出す国も出てきています。
さらに、2025年1月29日には、DeepSeekが大規模なサイバー攻撃を受け、一時、新規登録を停止する事態も発生しています。
注目度が高いゆえに、狙われる可能性もあり、しばらく落ち着かない日々が続きそうです。
DeepSeekの使い方
このように、『DeepSeek』は、低コストで高性能なAIモデルが使えるという、ありがたいサービスですが、個人情報保護の観点などで、まだ懸念の声や心配の声も多くあるサービスです。
公式サイト(https://www.deepseek.com/)にアクセスしたり、スマホアプリをダウンロードすることで、気軽に使い始めることができるのですが、”個人を特定する内容や、機密情報の入力はしない” など、利用は慎重に行うようにしましょう。
サイバー攻撃を受けているという心配なニュースも報道されているので、騒動が落ち着くまで利用を待ち、様子見しながら活用をはじめるのもおすすめです。
> AppStore「DeepSeek」アプリダウンロードページはこちら(iPhone用)
> GooglePlayストア「DeepSeek」アプリダウンロードページはこちら(Android用)