量子コンピュータとは?原理や仕組み、実用化されたらできること
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みなさんは『量子コンピュータ』という言葉を聞いたことはありますか?
ここ数年、デジタル技術の発展やAI(人工知能)の盛り上がりにより、この言葉を耳にする機会も増えてきました。
しかし、『量子コンピュータ』という言葉を聞いたことはあるものの、どんなものなのか、何ができるのかなどイメージがつかない人も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、今注目の『量子コンピュータ』について、その概要、原理や仕組み、そして実用化されたらできることにについて解説します。
量子コンピュータとは?
『量子コンピュータ』とは、「量子もつれ」や「重ね合わせ」といった、量子力学の現象を利用し従来のコンピュータよりも複雑な並行計算を可能とした技術です。
1982年に、アメリカの物理学者リチャード・ファインマン氏によって「量子力学を応用したコンピュータ」として概念を提唱され、1985年にイギリスの物理学者ドイッチュ氏によって基礎理論がまとめられました。
1994年に、アメリカの大学教授ピーター・ショア氏によって「量子コンピューターが実現により従来の通信における暗号方式が破られる可能性がある」という旨の警告が発され、量子コンピュータの存在は世間から注目を浴びることになりました。
このように、今後のデジタル技術の大幅な進歩の可能性を秘めているのが量子コンピュータです。
量子コンピュータの原理
『量子コンピュータ』の原理は、以下のような量子力学の性質を利用します。
- 量子ビット(キュビット): 通常のビットが0または1の状態を持つのに対し、量子ビットは量子力学の原理に基づいて0と1の状態を同時に持つことができます。これを量子重ね合わせと呼びます。
- 量子重ね合わせ: 量子力学では、未知の状態が観測されるまで複数の状態が同時に存在できるとされています。これにより、量子コンピュータは従来のコンピュータよりも高度な並列処理が可能です。
- 量子干渉: 量子ビットが重ね合わせ状態にあると、異なる経路を通る確率振幅が相互に影響し合います。この相互干渉によって、最終的な計算結果が形成されます。
これら量子力学の性質を活かしてコンピュータを動かそうとする概念が、量子コンピュータの原理となります。
- 量子重ね合わせを利用した計算: 量子ビットが0と1の状態を同時に持つことで、同時に多くの計算を行うことができます。これにより、特定の問題において指数関数的な高速化が期待されます。
- 量子干渉を用いた最適解の探索: 量子コンピュータは、量子干渉によって不要な計算経路を削減し、最適解を見つける確率を高めます。これが特に最適化問題において優れた性能を発揮する理由です。
- 量子エンタングルメント: 複数の量子ビットがエンタングルメント状態にあると、片方の状態を観測することで他方の状態も同時に確定します。これを利用して情報の高度な相関性を活かすことができます。
量子コンピュータでできること
『量子コンピュータ』が実用化されれば、様々な分野で革新的な進展が期待されます。
たとえば、自動車の自動運転技術の向上、新薬開発の効率化、そして暗号解読などが可能です。
1. 自動運転
『量子コンピュータ』を活用することで、膨大な情報を高速かつ複雑に処理し、自動車の自動運転技術の向上が期待されます。センサーデータや交通情報をリアルタイムに分析し、最適な運転経路を即座に計算することが可能になります。
2. 新薬開発
薬剤の効果や副作用の予測など、従来のシミュレーションでは難しい課題に対して、『量子コンピュータ』を用いてより精緻なシミュレーションが可能になります。これにより、新薬の開発プロセスが大幅に加速されることが期待されます。
3. 暗号解読
高度な『量子コンピュータ』が実現すると、様々な暗号解読が可能となります。同時に、暗号解読ができてしまう故の危険性も考えられます。従来の暗号方式が破られてしまうことでインターネットのセキュリティに大きな問題が発生してしまう可能性があるため、安全な通信手段として量子暗号通信の研究が進められています。
4. 機械学習
『量子コンピュータ』は従来のコンピュータよりも高度な並列処理が可能であり、機械学習のアルゴリズムやモデルのトレーニングにおいて効果的な利用が期待されます。大規模なデータセットの処理や複雑なパターン認識において、量子コンピュータの計算力が優れた性能を発揮する可能性があります。
量子コンピュータの方式
『量子コンピュータ』は、量子ゲート方式と量子アニーリング方式の2つの主要な方式に分かれます。それぞれ異なる原理とアプローチを用いて、問題解決に取り組みます。
1. 量子ゲート方式
“量子ゲート方式” は、量子ビットに基づいてゲート演算を行い、量子回路を構築して計算を実現します。これにより、高速で多くのデータを扱える一方で、ノイズが発生しやすく正確性がやや低いという欠点もあります。
2. 量子アニーリング方式
“量子アニーリング方式” は、組み合わせの最適解を見つけることに特化した方式です。量子ゲート方式の欠点であるノイズの発生を抑え、さらに応用も利くためビジネスシーンなどより一般向けの量子コンピュータとして期待されていますが、量子ゲート方式に比べ処理に時間がかかるという欠点もあります。
企業における量子コンピュータへの取り組み
1. Google
Googleでは、2019年に53個の量子ビットを持つ量子コンピュータにより、従来のスーパーコンピュータで約1万年かかる計算を約3分で解いたと発表。さらに2023年には新型の70個の量子ビットを持つ量子コンピュータが47年かかる計算を一瞬で解いたと発表するなど量子コンピュータ界では一歩先を行く研究を続けています。その活用事例として電池や素材、触媒などの分野を挙げています。
2. NEC
NECは、量子コンピュータのコアである “量子ビット” の製造に世界で初めて成功した企業として、量子コンピュータの実用化研究を続けているほか、世界で初めて量子コンピュータを商用化した『D-Wave社』と協業もしており、常にその領域を広げています。
量子コンピュータは様々な可能性を秘めた技術
『量子コンピュータ』に関する概要や仕組み、実用化の可能性、さらには異なる方式についての見てきました。
現在、日本でも多くの企業が『量子コンピュータ』の開発をしており、今後様々な分野で実用化が期待され、一般生活をはじめビジネスの場においても非常に注目されている技術です。
『量子コンピュータ』の進化が未来のテクノロジーにどのような影響を与えるか、今後の展開に注目していきましょう!