RISC-Vとは?ライセンス料はいくら?5つの特徴とArmとの比較・ちがい

RISC-V_logo

RISC-V(リスク ファイブ)っ何?

ほかのRISCアーキテクチャとはどう違うの?

そんな疑問はありませんか?

最近、プロセッサ業界の2大勢力『x86(エックス ハチロク)』と『Arm(アーム)』につづく、”第3の勢力” として話題にあがることが増えている『RISC-V(リスク ファイブ)』。

最近も、Androidに搭載されているチップ『Snapdragon(スナップドラゴン)』を提供する Qualcomm(クアルコム)社など5社が、RISC-V開発の新会社に共同出資することなどがニュースになりました。

いま、『RISC-V(リスク ファイブ)』は、コンピュータアーキテクチャの分野で、いちばんの注目株と言っても過言ではないでしょう。

そこで今回は、RISC-Vとは何か、どんなRISCアーキテクチャなのか、特徴は何か、Armと比較して何が違うのかなどについてお伝えします。

RISC-Vとは?

コンピューター基盤

(出典:RISC-V International

RISC-V(リスク ファイブ)とは、2010年にカリフォルニア大学バークレー校にて誕生した、”命令セットアーキテクチャ(ISA)” です。

RISCは、コンピューターの命令セットアーキテクチャの “設計に用いられる手段” の1つで、命令の数を減らすことで、コンピューターの演算速度を大幅に向上させることができるようになります

RISC-Vは、RISCの中でも新しく、”既存のソフトウェアをストレスなく動かすことができる” と言われています。

また、ソフトバンクグループ傘下で、高額なライセンス料のかかる、先行のRISCアーキテクチャ 『Arm(アーム)』とちがい、オープンソースライセンスで提供されているため、ライセンス料がかからない点も魅力です。

なぜ今、RISC-Vが注目されている? やっぱりライセンス料「無料」は大きい!

なぜ今、世界各国のメーカーが『RISC-V(リスク ファイブ)』の導入に積極的かというと、やはり、”RISC-Vがライセンス料なしで自由に使うことができる” 点の影響は大きいです。

通常、”命令セットアーキテクチャ(ISA)” を使用しようとすると、ライセンス料がかかってきます。

これまでは、ライセンス料という高額コストを支払える企業のみが、チップ製造に乗り出していました。

でも、無料で利用できるRISC-Vが登場したことで、低コストでのCPU開発が可能となり、高いライセンス料がネックとなって参入できなかった企業が、CPU開発の分野に新たに参入し、消費者の選択肢が増えることが期待されています。

Androidに搭載されているチップ『Snapdragon(スナップドラゴン)』を提供する Qualcomm(クアルコム)社が、RISC-V開発の新会社に出資したのも、こうした事情があったからなんですね!

RISC-Vの5つの特徴

RISC-V_イメージ

(出典:RISC-V International

『RISC-V(リスク ファイブ)』には、“無料” で使えること以外にも、さまざまな特徴があります。

特徴1. オープンソースのアーキテクチャである

『RISC-V(リスク ファイブ)』の特徴1つ目は、誰でも制約なく利用できる “オープンソースのアーキテクチャ” であるという点です。

“オープンソース(Open Source)” とは、無償(もしくは最小限の費用)で公開された、”自由に利用・改変・再配布ができる”、プログラムなどのソースコードのことを指します。

『RISC-V(リスク ファイブ)』は、オープンソースなので、ハードウェアの設計や開発が誰でも自由自在に行うことが可能です。

自由度高く開発ができるほか、提供元の倒産・吸収合併という影響を受ける心配がなく、コミュニティによってプロダクトが維持されているので、いきなりライセンス料が高額になったり、提供が終了してしまったりというリスクを気にすることなく開発できます。

メーカー側としては、とても使いやすい技術なんですね!

特徴2. 優れた演算能力がある

『RISC-V(リスク ファイブ)』の特徴2つ目は、”優れた演算能力がある” という点です。

RISC-Vベクトル演算では、”1つのCPU命令セット” で、同じ数学的演算を可能な限り実行することが可能です。

与えられたサイズのデータを基にベクトル命令を効率的に実行できるため、”ストレスなく演算” が行えます。

特徴3. 拡張性に優れている

『RISC-V(リスク ファイブ)』の大きな魅力の1つになっているのが、”優れた拡張性” です。

RISC-Vの仕様は、目的に応じて実装内容を選択できる、”モジュラー・アーキテクチャ” を採用していることから、異なる命令セット拡張を行うことができます

拡張性の高さを利用することで、特定の目的に応じてカスタム命令を追加したり、最適化を行ったりといったことができるようになります。

特徴4. 高性能なプロセッサ設計が簡単にできる

なお、「拡張性が高い」=「利用しにくいのでは」と思う人もいるかもしれませんが、『RISC-V(リスク ファイブ)』は、”シンプルな命令セット” を採用しているため、基本的な操作だけで簡単に使いこなすことができます。

この特性を生かすことで、命令セットアーキテクチャを利用するのが得意ではない人でも、高性能なプロセッサ設計を簡単に行うことが可能になります。

プロセッサ設計で悩んでいる場合は、RISC-Vを試してみるのがおすすめです。

特徴5. エコシステムの成長が著しい

『RISC-V(リスク ファイブ)』の特徴、さいごの5つ目は、”エコシステムの成長が著しい” という点です。

エコシステムとは、企業同士が互いに協力し、それぞれの業務やサービスを補う構造ことを指します。

RISC-Vのエコシステムの規模は、急速に拡大していて、民間企業を中心にプロセッサの設計ツール、開発環境、ソフトウェアスタックなどが行われています。

今後RISC-Vの利用者の人口がさらに増加すれば、RISC-Vがより使いやすくなることが期待でき、急成長を遂げると期待されています。

risc-vインターナショナルwebサイトキャプチャ

日本でも、『RISC-V勉強会』などが開催されていて、無料で誰でも利用できるオープンソースのアーキテクチャであることから、教育や研究の分野でも積極的に利用されているので、注目しておくと良いでしょう。

> RISC-V Japan ページはこちら

RISC-VとARMの違い

ARM アーキテクチャ デジタル社会におけるイノベーションの基盤

(出典:Arm

『RISC-V(リスク ファイブ)』と同じRISCアーキテクチャとして、有名なのが『Arm(アーム)』です。

Arm(アーム)』は、ARMホールディングスの事業部門である、英『ARMホールディングス』が開発したアーキテクチャであり、低電力アプリケーションやスーパーコンピューターなどに採用されています。

『ARMホールディングス』は、イギリスのケンブリッジに本社を置く企業ですが、2016年7月に日本のソフトバンクグループが、当時のソフトバンクにとって過去最大の出資額である “3.3兆円” もの資金を投入して買収しました。

2023年8月21日に、米ナスダック市場に株式を上場する計画を発表し、上場時の時価総額は、日本円にして8兆円を超える規模。2023年最大規模のIPOとなる見通しです。

 

現状、採用数の多さでは、RISC-VよりArmの方が圧倒的に多いですが、Armの場合はRISC-Vとはちがい、使用するにはライセンス料が発生します

使用する際に発生する “高額コスト” がネックで、企業によっては、予算の都合上手が出せないこともあり、現在はRISC-Vを選ぶ企業が増えています。

ただ、Armは企業が管理しているアーキテクチャであるという性質から、”サポート体制” がしっかりしていて、万が一のトラブルの際に細かいサポートが受けられるという点は、Armが優位だと言えるでしょう。

RISC-Vを利用する際に気をつけること・注意点

オープンソースで気軽に利用できることが売りの『RISC-V(リスク ファイブ)』ですが、それゆえに気をつけなければならないこと・注意点もあります。

まず、サポート体制が整っていないことです。

オープンソースがない場合でもRISCに関する情報を確認することが可能ですが、“英語” で情報提供されている場合がほとんどです。

また、比較新しいアーキテクチャであることから、”サポートに関する情報も少ない” です。

そのため、担当するエンジニア同士で情報交換をしてトラブルに対応できるだけの知識を得る必要があり、実際の製品化を目指す際は注意してください。

RISC-Vを採用する企業は、どんどん増えるはず!

これまで見てきた通り、『RISC-V(リスク ファイブ)』は、誰でも自由に利用することができる、今注目の “命令セットアーキテクチャ(ISA)” です。

オープンソースという特性上、企業や大学などでの研究・開発もどんどん進んでいるので、プロセッサ業界の2大勢力『x86(エックス ハチロク)』や『Arm(アーム)』を凌駕する存在になる可能性は少なくありません。

直近も、米ナスダック市場に上場するなど、話題が尽きないので、今後の動向に注目していきましょう!

 

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